オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キラー・メイズ』

Dave Made a Maze, 81min

監督:ビル・ワッターソン 出演:ニック・サン、ミーラ・ロフィット・カンブハニ

★★★

概要

段ボール迷路で迷子になる話。

短評

独創的なセットの魅力が一点突破なホラー・コメディ。ストーリーは迷路が自己増殖している辺りまでのワクワク感に応えないまま完全に失速するお粗末さだが、とにかく手作り感溢れる迷路が見ていて楽しい。これを担当したのが「Production Design」なのか「Art Direction」なのかは分からないが、トリシャ・ガム、ジョン・サムナー、ジェフ・ホワイトの三名に大いなる賛辞を送っておきたい。作ってる本人たちも楽しかっただろう。

あらすじ

アニー(ミーラ・ロフィット・カンブハニ)が帰宅すると、リビングの真ん中に段ボール迷路を見つける。中から恋人デイヴの声が聞こえて、曰く「迷子になった。中は広いんだよ。頑張って作ったから壊したくない」とのこと。アニーは友人のレナードたちを集め、デイヴを救出するため迷路に入っていく。

感想

迷路に入ると本当に広い。異空間である。ここで手が込んでいるのは、迷路内の壁が単に大きな段ボールを張り合わせただけでなく、小さな切れ端を張り合わせてちょっとした芸術品のようになっている点。それも入り口は本当に“切れ端”だったのが、迷路を進むにつれて徐々にデザイン性が増していく。「これ、作るのめっちゃ大変だろうな」と。きっと三十郎氏が「大変だろう」と意識しないセットにも想像を絶する苦労が詰まっているのだろうが、本作は手作り感故に苦労が想像の範疇にあって、「頑張ったなあ」と感心するのである。これが本気の遊びというやつだ。

「自作の迷路から出られない」という話は一応ホラーなので、ちゃんと人が死ぬ。デイヴは迷路に罠を仕掛けているのである。罠に引っ掛かると首チョンパされるデンジャラスな迷路である。ただ、迷路内は異世界、ファンタジーである。切断された首から吹き出る鮮血が、……なんと毛糸やビニールテープである。なんてファンシーな。全然グロくない。グロくても愉快になりうるが、本来あるはずのグロを排除しても愉快になるらしい。このコメディ感だと迷路から脱出すれば死者も生き返って大団円……となりそうなところを、死んだまま雑に片付けられている放り投げ感が、素敵でもあり、「力尽きたな」とも思わされた。

造形の魅力だけでなく、遠近法を利用した二次元的な空間が出現したり、登場人物が段ボール製の人形に変身する部屋があったりと、多彩なアイディアで楽しませてくれる。これだけやれば、段ボールを使って表現できることはやり切ったと言えるだろう。「何かを作りたい」という妄念に取り憑かれたデイヴが最後に脱出するのは、メタレベルでの必然と言える。

迷路内で上映されている“英国の上流階級のドラマ”を見た後に、皆が「You fucked my wife?」を連呼しているのだが、これって『レイジング・ブル』以外にも使われている台詞なの?

ハイタッチを求める紙女に変身するブリン(ステファニー・アリン)と、恋人とイチャついてるだけで本編に絡まない女(カミラ・アルネス)も一応メモを。

キラー・メイズ(字幕版)

キラー・メイズ(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/06
  • メディア: Prime Video