オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヒトラーの忘れもの』

Land of Mine(Under Sandet), 100min

監督:マーチン・サントフリート 出演:ローランド・ムーラ-、ルイス・ホフマン

★★★★

概要

第二次大戦の戦後処理でドイツの少年兵がデンマークで地雷を除去する話。

短評

メンタルやられる系の戦争映画。観る前から「ヤバそうだなあ……」と察して覚悟していたものの、やはりヘコんだ。心を抉られた。多くの映画を観て“ナチスに対して”抱いてきた「人はここまで冷酷になれるのか」という絶望を、“ナチスの被害者であったはずの人々に対して”抱くことになる。彼らの感情を理解できなくもないのがまた辛い。「やめときゃよかった」という後悔と「これは観ておくべき映画だった」という気持ちが半々である。

あらすじ

1945年。ナチス・ドイツによる占領から解放されたデンマーク。その多くが少年たちから成る捕虜のドイツ兵による地雷の除去作業がはじまる。 デンマーク軍からも地元住民からも「我々はドイツ兵を歓迎しない」と憎しみを向けられ、食料の配給もままならない劣悪な環境下で、少年たちは故郷へ帰る日を夢見て作業を進めていく。とある隊を指揮するラスムスン軍曹もはじめは罵声を飛ばしていたが、命を落としていく少年兵の姿を見て考えを変えはじめる。

感想

三十郎氏は、「少年たちは何も悪くないのに」とか「彼らも被害者」と言うつもりはない。本作で描かれる強制労働はジュネーヴ条約に反するものとのことだが、ナチスに加担した以上は彼らにも一定の責任があると考える。敗戦が遅れていれば人を殺すこともあっただろう(もしかすると既に殺した者だっていたかもしれない)。条約違反自体を気の毒だとは思っていない。デンマーク人の処罰感情にも同情できる。

それでも少年兵に対する同情を禁じ得ないのは、彼らに辛く当たるデンマーク人たちがとても怖いのである。アイヒマンについても同じ事が言えるが、立場が人間を作る。立場さえ与えられればどこまでも暴走できる。ナチスを憎む人々が、ナチスと全く同じ恐ろしい存在になりうる。作業中に嘔吐して大怪我を負った少年兵に対し、「いい気味よ」と言い放つ地元住民がいる。この気持がよく分かってしまうのである。きっと三十郎氏も同じ立場にあれば、同じことを考え、同じ行動をとったに違いない。少年兵の気持ちを考えても辛いし、誰だって残酷になりうると考えても辛い。

「ドイツに帰ったら復興に尽力するんだ」と大志を抱き、効率的な作業方法を提案する少年兵たち。その彼らに対してどこまでも冷酷な大人たち。ああ、もう人間ってなんなんだろう……。

地雷の除去は尋常でない緊張感を伴う。訓練の段階で早々に死亡者が出てしまうので、その後は常に「いつ死んでもおかしくない」という恐怖に囚われる。信管を抜くシーンは毎回怖い。その瞬間は、唐突に訪れることもあれば、「嫌な予感しかしない」というタイミングで訪れることもある。穏やかな海を背景に、ジワジワとした恐怖とドカンの衝撃の両方が印象的だった。作業や仲間の死にメンタルをやられる少年たちの姿を見るのも辛い。

ラスムスン軍曹は徐々に少年兵たちと心を通わせ、談笑したりサッカーしたりするまでの仲になる。その後事件があって再度怒りをぶつけるものの(この死の行進が怖い)、最後は軍の命令に逆らって良心の声に従っている。この感動的なはずの結末を打ち消すくらいに「辛い」という気持ちにばかり襲われる一作だった。

日本にも旧占領地域で同じような思いをした人がいたりするのだろうか。三十郎氏はあまりにも歴史を知らない。

ヒトラーの忘れもの(字幕版)

ヒトラーの忘れもの(字幕版)

  • 発売日: 2017/06/06
  • メディア: Prime Video