オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』

La grande bellezza(The Great Beauty), 141min

監督:パオロ・ソレンティーノ 出演:トニ・セルヴィッロ、カルロ・ヴェルドーネ

他:アカデミー賞外国語映画賞

★★

概要

元人気小説家の退廃的なローマ生活。

短評

苦手なタイプのヨーロッパ映画。雑誌のLEONに出てきそうな洒落者のイタリア親父(初老)が、人生についてなんのかんのと講釈を垂れている。「これは現実なのか」と思うほどに美しい映像や印象的な言葉が並んでいるが、全体的には壁に激突する女のパフォーマンスを見せられた時のようにポカンとさせられた。登場人物のスノビズムも鼻につく。三十郎氏は決して若いとは言えないが、人生の終着駅を意識してその意味を問うほど老いているわけでもない。本作を楽しむにはまだお子ちゃまなのであった──と思ったら、監督もまだ40代で老匠と呼ぶには若かった。

あらすじ

若い頃に小説家として高く評価され、早々に筆を折って以降は何不自由なく記者として暮らすジェップ。夜な夜なパーティーに繰り出し、毎日朝帰りしているが故に「朝を知らない」京楽的な生活を送っているが、かつての恋人エリーザ(Annaluisa Capasa)の訃報に触れ、新作を書いてみようという気になる。

感想

老若男女、妊婦から小人まで踊り狂うパーティー。ストリッパーの娘の将来を心配し、「ポーランド娘がヤバいんだ」と喋り倒す爺さん。そして、主人公のオシャレ親父。「イタリアの老人は元気だな」と思ったが、老人の方が若者よりも元気そうに見えるのは日本も同じか。本作は、徹頭徹尾彼らの“持てる者”故の余裕が前提にある物語で、“持たざる者”の三十郎氏としては「そんなもん知るか」としか思えないのである。そんな奴に「軽薄で無意味な人生を送ってきたけど、聖女様のおかげで大切なものに気付いたよ」みたいなことを言われましても……。

小綺麗で下品なジェップの世界とは対照的に聖女の容貌はグロテスクである。彼女のはほぼ呆けているだけなのだが、階段を這いずり上がるシーンから察するに、美しいのは彼女の方ということになるのか。

65才のジェップが「望まぬ行為に費やす時間はない」と考えるのはもっともだと思うが、セックスの後に挨拶もしないで帰るのはいかがなものかと思う。あの歳で自撮りオバサンのオリエッタ(イザベラ・フェラーリ)はちょっとイタいと思うけれど、人間が望まぬ行為を放棄したら社会は成り立たない。たとえ社会が成り立たなくても構わないにしても、他者に対して一方的に犠牲を強いるのは傲慢である。三十郎氏は、やはりこの老人が好きになれない。

社会参加を説く女性作家を、ジェップが「党の幹部と寝て重用されただけだろ」と完膚なきまでに論破するシーンが笑える(その女はプルプルと逃げ出す)。彼女のように他者を批判する人に限って、自分への批判には滅法弱かったりする。自分の小説を「小品」と自認するジェップの余裕とは対照的だった。

主人公が作家だけに様々な言葉を紡ぐ映画ではあるが、三十郎氏は友人ロマーノの「郷愁は未来を信じられぬ者の唯一の気晴らし」がお気に入り。物語を意識せず、「綺麗な映像だな」とか「なんかいい事言ってるな」と適当に流し見する分には最高の一作だと思う(パーティーのシーンは喧しいが)。

冒頭でぶっ倒れる日本人観光客が日本人に見えないのは何故なのだろう。服装だろうか。ガイドの日本語は分節が不自然で、英語の方が聞き取りやすいレベルだった。聖女に拝謁するアフリカ人の民族衣装もそうなのだが、イタリア人はナチュラルに差別感情を発露する。