オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『メイド・イン・ホンコン』

香港製造(Made in Hong Kong), 109min

監督:フルーツ・チャン 出演:サム・リー、ネイキー・イム

★★★

概要

自殺した少女の遺書を盗んだら夢精が止まらなくなる話。

短評

中国返還前の香港ってこんな空気だったのかなあ……と知りもしないくせにノスタルジーに浸りながら。低予算の自主制作映画ということで、洗練とはかけ離れた熱量と勢いを感じる一作だった。主人公が言うところの「変化についていけないと居場所がなくなる」という気持ちはなんとなく分かる。当時の変化は想像できないくらい大きかったのかなと思いつつ、若者の刹那的かつ破滅的な生き方はいつの時代も変わらないと思ったり。

あらすじ

中学を中退し、ウィン兄貴の借金取りの仕事を手伝う青年チャウ。弟分で知的障害者のロンをイジメっ子たちから守りつつ、母と二人暮らしをしていた。ロンが偶然居合わせた飛び降り自殺の現場から二通の遺書を盗んできて以来、彼らの生活に変化が現れる。その一方で、チャウは取り立て相手の娘ペンと仲を深めるも、彼女は腎臓病で先が長くないことを知る。

感想

チャウが「何回したか分からない」ほど夢精している。夢に自殺した少女サンが現れて、その度に夢精である。彼の夢に登場するサンの遺体から赤い血の代わりに白い液体が流れ出していたのは、そういう意味なのか。「自己処理して防げよ」と言いたいところだが、一晩に何度もということもあるため、そういう次元ではないらしい。後処理の惨めさは壮絶だろうが、その生命的活力は少し羨ましいぞ、青年。射精については、ロンがイジメっ子から「抜いてみせろ」と強要され、立っている相手の顔に届く見事な飛距離を披露していた。他人の射精を見たがる男は潜在的にゲイなのではないかと思う。

飛び降り前に屋上でアンニュイを演じるサン。この時の色彩が不自然なまでにブルーである。一体どういう意図なのかと訝しんだが、ラストで読み上げられる彼女の遺書によると物凄くしょうもない理由で自殺していて、単純に彼女の“ブルーな”気持ちを表現したものであったらしい。しかし、その色彩は美しくもあり、くだらないことで思い詰めるのが青春なのである。

遺書は二通あって、一通は家族宛。もう一通は恋人宛。チャウ一行が女子校に恋人宛の方を返しに行き、体育教師みたいな男に渡している。その間、長縄跳びしている女子生徒たちを眺めているのだが、顔の良い子よりも発育の良い子に目がいってしまうのが悔しい。

劇中でペンが美人扱いされているのだが、どうにも最後まで美人には見えなかった。自殺少女サンと民生委員のリーさんは美人だと思う。彼女を射止めたキョンは果報者である。この名前を聞くと別のキャラクターを思い出すが。

チャウのベッド脇には『ナチュラル・ボーン・キラーズ』の、ペンのベッド脇には『マイ・プライベート・アイダホ』のポスターが貼ってある。なんというわけでもない男女の差や性格を感じる演出である。かつて三十郎氏の部屋には『スナッチ』や『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』のポスターを貼っていた。ガイ・リッチーこそが男の部屋をオシャレたらしめる要素なのだと信じていた。

香港はとても暑そうで、その対策なのかチャウが冷蔵庫で冷やしたパンツを履いていた。気持ち良さそうである。しかし、たとえ洗濯してあっても食材と一緒にパンツは嫌だな。夢精したものであればなおさら。