オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スーパーサイズ・ミー2:ホーリー・チキン!』

Super Size Me 2: Holy Chicken!, 102min

監督:モーガン・スパーロック 出演:モーガン・スパーロック

★★★

概要

モーガン・スパーロックがファーストフード店をオープンする話。

短評

かつて一ヶ月間マクドナルドだけを食べ続ける生活に挑戦したモーガン・スパーロックが、再度外食産業の欺瞞に挑んだ一作。前作が消費者の立場からダイレクトに観客に響く実験だったのに対し、本作は製造側に回った分だけインパクトは薄れている。しかし、どうしても重くなりがちな食品産業の裏側をコミカルに描いているのは楽しいし、我々が普段目にしている広告の狙いを教えてくれる視点が新鮮だった。

あらすじ

伝説のマクドナルド生活から12年。ファーストフード店のメニューにはサラダが増え、栄養成分が表示されるようになった。一方で、アメリカの肥満人口は一向に減る気配を見せない。果たしてファーストフードは本当に変わったのだろうか。「問題を知るにはその一部になること」をモットーに、モーガン・スパーロックがファーストフード店の経営に乗り出す。

感想

“健康的なファーストフード”をテーマに、メニューは低脂肪で安価なチキンサンドを選択。せっかくなので鶏を育てるところからはじめてみようということで、一つは養鶏編。もう一つはメニュー作りや販売戦略などの経営編。二つの視点からファーストフード産業を描いている。

前者の養鶏編は、五つの大企業がアメリカの養鶏産業のほぼ全てを寡占していて、大企業には消費者に知られたくない悪辣な裏側があるという話。また、養鶏の粗悪な環境も描かれている。こちらはよくある食品ドキュメンタリーをなるべく軽いタッチで伝えようとした感じだろうか。言ってしまえば普通である。

面白いのは後者の経営編。「健康ハロー効果」なるものに焦点を当て、我々消費者がいかに騙されているのかを教えてくれる。本作で扱うチキン・サンドウィッチ。グリル・タイプとフライ・タイプの二種類があり、圧倒的に後者が人気である。だって揚げ物は美味しいんだもの。しかし、揚げ物(フライ)は健康的でない。そこで、フライという言葉を使わずに、「クリスピーチキン」と呼ぶ。たったこれだけで「フライ」に含まれる悪印象を和らげることができる。

「フライ」よりも「グリル」の方が健康的なので、揚げたチキンをグリルして着色料で焼き目をつける。これで「グリル」という言葉を使える。我々が目にする“健康的そうな”言葉には何の実態もない。消費者を安心させて不健康なファーストフードを胃袋に捩じ込むための罠なのである。「オーガニックの鶏肉」と聞けば安心できそうだが、それは精肉過程の話であって飼育過程には何の規定も設けられていなかったりする。「ホルモンフリー」も安心できそうだが、品種改良された鶏は成長が早く、そもそも成長促進剤を注射する必要なんてない。全てが過大広告である。

「健康ハロー効果」の領域は留まることを知らない。チキンサンドに野菜を挟んでおけば、消費者は勝手に「野菜が入っているなら健康的」だと思ってくれる。店の内装に緑色を使用し、家具を木目調にし、包装に紙を使えば「自然派の店」だと思ってくれる。店内の壁やポップには企業の様々な取り組みが書いてあることだろう。よく読まずに「頑張ってるんだな」と思うかもしれないが、ちゃんと読めば大したことなんて一つも書いていない。

凄いぞ、健康ハロー効果!以上のような「どうやってヘルシーだと思い込ませるか」という企業の“努力”を、我々は(そうとは知らずに)よく知っている。町で見かけるあれやこれやにはこんな狙いがあったのか!もう騙されないぞ!

とは言え、ファーストフードを「本当に健康的」だと思って食べている人はほとんどいないと思う。「不健康だとは思うけど……」の「けど」という脆弱な垣根を取り払うために、あの手この手の情報攻撃が仕掛けられているのだ。

スピルバーグやスコセッシが製作総指揮に名を連ねた“だけ”の映画は、「巨匠ハロー効果」とでも呼ぶべきだろうか。