オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『叫びとささやき』

Viskninger Och Rop(Cries and Whispers), 91min

監督:イングマール・ベルイマン 出演:ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン

他:アカデミー賞撮影賞(スヴェン・ニクヴィスト

★★★

概要

病に伏せる女と姉妹と召使い。

短評

ベルイマンの作品は難解であるが故に敬遠しがちである。しかし、「映画好きたる者、教養としてベルイマンくらいは……」という義務感がなくもない。当ブログでは過去に三作品を紹介し、それ以外には『野いちご』を観たことがあるのだが、素直に楽しめた記憶があるのは『野いちご』と『魔術師』だろうか。基本的には返り討ちに遭っている。本作でも冒頭から時計が“何かを象徴していそうなアイテム”として登場し(これはラストの「時よ止まれ」と呼応するのか)、「ああ、これは分からんやつだ……」と諦めた通りに難解な映画だった。

あらすじ

カーリン(イングリッド・チューリン)、アングネス(ハリエット・アンデルセン)、マリーア(リヴ・ウルマン)の三姉妹。アングネスは病床に伏しており、医者はもう長くないと言う。姉妹と召使いのアンナ(カリ・シルヴァン)がかわるがわる看病していたが、アングネスは苦しみながら逝去する。

感想

「これはこういう話なんだな」という概略さえ掴めればディティールを読み解く取っ掛かりとなるのだが、三十郎氏の知識と知能では一言にまとめられない。ひたすらディティールだけを観ていくことになったものの、話の分からなさに気を取られてディティールに対する注意が散漫となるジレンマである。

OPの赤バックに白文字の組み合わせが、本編にそのまま継承されている。部屋の壁は真紅に彩られており、アングネスたちは白い衣服を身に着けている。対して、カーリンとマリーアは回想編や葬儀以降のシーンでは他の色の服を着ていることが多い。この赤と白の組み合わせは、アングネスにとって疎外感を覚えていた生前の母に一瞬だけ近づけた時のイメージである。姉妹には確執があるものの、本人が日記に綴っているように皆が揃った時間はかつての記憶を呼び起こす幸せな時間だったのかもしれない。

その一方で、カーリンは「あなたの死にかかわりたくない」と口にしており、家族というものの結び付きというものは、かくも複雑怪奇である。

絵画的なショットが多い本作の中でも、アンナが片乳を放り出してアングネスの遺体を抱きかかえるショットはそのまま聖母画である。死んだはずのアングネスが喋りだして途中からホラー映画になるのだが、怖がる姉妹とは対象的に召使いのアンナだけが最後まで彼女に寄り添っている。アンナは幼い娘を亡くしているため、アングネスを娘に重ねたところがあるのだろう。

マリーアの夫ヨーアキムが腹を刺す描写は何だったのだろう。その後は普通にピンピンしているし。仮にあれがマーリヤの願望や妄想であったとするなら、カーリンが股間に割れたガラスを押し当てたシーンもそうなのか。となると、アンナだけがアングネスに寄り添う描写も、娘を亡くした彼女の願望の投影に過ぎないのか。

アンナが見せた愛、アングネスの記憶にある幸福、姉と妹が見せる醜悪さ。果たして本題はどれなのだろう。その全てが、ベルイマンの暴いた人間の営みということでよいのか。(観る前から分かってはいたが)やはり今回も完膚なきまでの返り討ちである。しかしながら、この作品の放つ不穏な空気や映像に、どうしようもなく惹かれるものがあるのも事実である。

叫びとささやき

叫びとささやき

  • メディア: Prime Video