オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『神の手 血塗られた儀式』

Vilsen(Ave Mater), 115min

監督:ラスムス・ティルジティス 出演:ヨーラン・シェーグレン、アレクサンドラ・ツェッテルベリ

★★★

概要

“母なる神”を信仰するカルト教団が連続殺人事件を起こす話。

短評

Amazonの紹介文には「極上のミステリー」と書いてあるのに、主人公がちっとも謎解きしてくれない映画。主要人物がグダグダやっている内にカルト教団の計画が進行し、最後は計画に巻き込まれて、それでも敵がグダグダやっている内に勝手に解決したことになっていた。「北欧ミステリー×カルト」の絶好の組み合わせの割には画面が明るくて陰鬱さを感じさせず、何をしたいのか分からない一作だった。

あらすじ

スウェーデンヨーテボリ。背中に同じ印を刻まれ、手に釘を打ち付けられた二件の儀式めいた殺人事件が発生する。事件の捜査を担当するのは、仕事中毒で妻に捨てられたヨーラン。彼の元に元牧師のガブリエラが現れ(女性も牧師になれるのですね)、“神の子ら”というカルト教団が事件に関わっていると告げる。彼女は、幼い頃に連れ去られた父へと繋がる教団の調査を続け、自らが教団に追われる身となっていた。

感想

犯人の正体には意外性があったものの、それは「お前かよ……」というガッカリな類のもの。伏線が繋がって犯人へと導かれるのではなく、突如「私が犯人でした」と暴れだすタイプである。「カルトはどこにでもいる」という話なのかもしれないが、物語としては致命的につまらない。ヨーランに対する襲撃が伏線だったと言えなくもないが、それは事件の本筋ではない場外戦を無理やり伏線に仕立て上げただけだと思う。ヨーランとガブリエラが協力して捜査を進めるわけでもない展開が、散発的で、まとまりの悪い印象を強めていた。

要点を得ないとっ散らかった物語が、最後は完全なオカルト展開となる。「こいつら何やってんだ」感が尋常ではない。完全に置いてけぼりである。その前にも大規模な事件が発生しているのだが、これが教団の計画とどう関係があるのか分からない。謎解きを放棄するのなら、いっそのこと“謎”自体を放棄して、教団の計画とそれをいかに食い止めるかに焦点を絞れば、情報整理が少しはマシになったのではないだろうか。

ヨーランは主人公で刑事なのに、不安になるくらい弱い。一応容疑者扱いになっているガブリエラと行動を共にしていて、「やっぱりお前がやったんだろ」と告げると、自分よりも数段身体の小さな彼女に押し倒されて逃げられる。遺留品から次の事件の匂いを嗅ぎつけて現場に踏み込みと、犯人が呑気に包丁を洗い流していて、二対一の状況なのに悠々と逃げられる。この無能刑事……。彼の肉体が役に立つのは、息子の担任教師を口説く時だけだった(それも身体能力は必要なかったわけだが)。一方のガブリエラは車に轢かれても余裕なタフさだった。

“神の子ら”は「“父なる神”がいるのに、どうして“母なる神”がいないのか」という発想の持ち主である。フェミニストにもこういう主張をしている人がいるのだろうか。三十郎氏としては「そもそも“父なる神”もいないんだよ」と言いたいところだが、彼らは既存の神を否定しても神という存在自体は否定できないらしい。

スウェーデン映画らしい金髪碧眼の美男美女が一切登場しないのも残念なところ。

神の手 血塗られた儀式(字幕版)