オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』

倩女幽魂(A Chinese Ghost Story), 96min

監督:チン・シウトン 出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン

★★★

概要

幽霊と人間のラブロマンス的な話。

短評

今年に入ってからぽつぽつと観てきた中華文化圏のホラー映画が、いずれもキョンシー的な“ホラーとは違う何か”だったために、「ゴーストであればどうだろう?」と試してみた一作。怖がらせるつもりが微塵も感じられなかったし、やっぱり道士が出てきてバトルするしで、少なくとも「幽霊」と聞いて想像するホラー映画ではなかった。しかし、ジャンルミックスなのか何なのか分からないカオスが、笑うしかないというレベルで笑えるのであった。怖がらせようとするホラー映画はないのかな?

あらすじ

郭北県の蘭若寺。そこは幽霊が出ると地元民から恐れられているものの、貧乏書生のツォイサン(レスリー・チャン)が無料の宿を求めてやって来る。狼に追われながらもなんとか辿り着いたツォイサンは、寺の近くの東屋でシウシン(ジョイ・ウォン)という美女に出会う。しかし、シウシンは人間の男を誘惑し、ロウロウなる凶悪な妖怪に献上する幽霊だったのだ。

感想

シウシンみたいな美女に誘惑されて一戦交えられるのなら、それも悪くない死に方だと思う。少なくとも肺炎を罹患して苦しみ悶えながら逝くよりはよほどマシである。交わる前に足首につけた鈴を鳴らされた男はご愁傷としか言いようがないが、“誘惑される”という行為をもって満足するより他にない。三十郎氏はそのレベルの非モテ男である。何も出来なくても満足するので、どなたか慈悲深い(できれば金髪碧眼のセクシーな)美女は三十郎氏を誘惑してくださらないか。

男が気持ちよくなっているところにミイラがやって来て、本人もミイラ化する。このミイラは全然怖くないのだが、特殊効果としては意外にも出来が良く、終盤に登場する触手なんかもよく動いている。これはホラーというよりもモンスター・パニックである。

何が何だか分からなくなってきたカオスに立ち向かうのがヒゲ面のイン道士。ワイヤーアクションを駆使した武術を見せたかと思えば、魔法のように「エイヤぁ!」と小規模爆発を起こす。人間対人間、人間対妖怪、幽霊対幽霊とアクション・シーンの多い一作だった。やはり中国では敵が誰であろうとカンフーで立ち向かうのだ。道士は万能である。

妖怪の親玉ロウロウが女装した(おネエ感のある)おっさんみたいな外見なのだが、演者のラウ・シンミンは普通に男性だった。一体どういう設定の妖怪なのだろうか。

ツォイサンとシウシンが一夜を共にしている時に、ボーカル付きの曲が流れて(本人たちは歌っていないが)ミュージカルのようになっている。ここだけインド映画感があった。このシーンとOPクレジット中に雨が降っているのだが、OPの方は演出で人為的に降らせているのかと思ったら最終的に地面が沼と化して、本物なのだと分かった。

聊斎志異』の一篇『聶小倩』が原作となっているそうである。『聊斎志異』と言えば、『森見登美彦をつくった100作』のNo.93であり、『熱帯』の作中で小説家的停滞期にある登美彦氏が万年床に寝転がって読んでいる一作でもある。全ては『熱帯』に繋がっている。登美彦氏の短編を一つ読んだだけなのに、『熱帯』熱が再燃しそうな勢いで人生を侵食してくる。