オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『模倣霊』

장산범(The Mimic), 99min

監督:ホ・ジョン 出演:ヨム・ジョンア、シン・リナ

★★★

概要

人の声を真似する妖怪の話。

短評

萇山虎(チャンサンボム)という妖怪をモチーフにした韓国のホラー映画。妖怪が人間に取り憑いた姿はゾンビでしかないので怖くないが(むしろ笑える)、“それ”が引き起こす“声”を主軸にした恐怖描写は悪くなかった。そこから導かれる母子の物語も切ない。欲を言えば、萇山虎がどのような現象の暗喩的存在であるかについての言及がもう少し欲しかったような気がする。そこは消化不良である。

あらすじ

呆けてしまった姑を連れて、夫の故郷に引っ越してきたヒヨン(ヨム・ジョンア)。彼女は、5年前に失踪した息子ジュンソのことを諦め切れず、姑の記憶が息子に繋がる唯一の鍵であると考えている。彼女の家に迷い犬を探しに来た姉弟を追いかけると、ある洞窟に辿り着く。洞窟の近くで一人の少女(シン・リナ)を見つけて保護すると、少女はヒヨンの娘(パン・ユソル)と同じジュニと名乗る。その後、洞窟の付近でいくつもの失踪事件が発生していることが明らかとなる。

感想

冒頭で浮気相手(?)と共に妻を洞窟に埋める男が登場し、洞窟の結界が破られる。男が道中で犬を轢き殺し、その犬が件の迷い犬である。再び入り口を埋めた洞窟から白い霊気のようなものが吹き出し、それがタイトルの文字となる演出が良かった。妻殺しの状況自体がそれなりにスリリングなのだが、この男は結界を破るための狂言回しでしかなかったのか。

夫妻の息子ジュンソが失踪した過去が、あらゆる場面に影響してくる。事件の影響からヒヨンは警察を信用しておらず、それが身元不明少女を迎え入れても警察に届け出ない理由となる。この少女が最初は無口で不気味なのに、ジュニの真似をはじめると可愛くなってきて、最後にヒヨンの事情も相まって切ないのか怖いのか分からない事態となる。果たしてヒヨンは嘘だと理解した上で受け入れたのだろうか。

ホラー映画には制限がある方がよい。本作は、基本的には“声”だけで恐怖を煽る構造になっている。ただの勘違いなのか異常事態なのかの境界にある状況が良い。それだけに鏡とゾンビの描写は蛇足に感じた。また、妖怪が知るはずのないジュンソの声を真似できるのは、あるべき制限からはみ出してしまったと思う。

萇山虎を信仰する巫堂(ムーダン)による祈祷シーンが不気味だった。韓国ではカルト団体がウイルスを撒き散らしたという報道があったばかりなので、存在に妙なリアリティがある。

本作にも訳知り顔の人物(盲目の女)が登場し、「あれは萇山虎よ。早くここから去りなさい」と教えてくれる。彼女のような説明役が存在するパターンと主人公が自分で調べるパターンでは、どちらの方が良いのだろう。得られる情報は同じであり前者の方が手っ取り早いが、「お前、誰なんだよ」感が余計なノイズとなる。

模倣霊(字幕版)

模倣霊(字幕版)

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