オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『或る「四畳半日記」伝』森見登美彦

概要

日記に予言された17日間の「偉大でない日々」。

感想

熱帯』の熱に浮かされて森見登美彦氏の単行本全作品を通読していた際に存在を知ったものの、未読のままだったウェブ連載の一作。三十郎氏は昭和の男であるため、スマホやPCの画面で長文を読むのが苦手なのである。「その内に読もう」と放置している間に存在が忘却されていたが、「図書館へ行くのも不要不急の外出」と断じて読書離れしていたら、活字欲氏が「何か読ませろ!」と俄にギャーギャーと騒ぎ出した。

そう言えば、三十郎氏は昨年のプライムデータブレットを購入していたのであった。Kindle Unlimitedのお試し期間は(桃色及び桜色写真集を眺めるのに忙しくて)、「紙の本から電子書籍に移行して環境に優しい男になる」という目的が達成されないままに終了してしまったものの、活字欲氏の蜂起により本作の存在を思い出した。「タブレットで文字を読む」べきタイミングが運命的に訪れたのである。

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そこで、こちらの作品。2016年の1月から4月にかけて全4回で連載されている。2016年であれば、作家生活10年目の3年目の集大成『夜行』と格闘していた時期であろうか。本作は、近年の作品とは趣の異なる──初心に帰ったと言うべきか、焼き直したと言うべきか、『四畳半王国見聞録』以来最新の四畳半世界的腐れ大学生の話である。

主人公・松本清弘が、「四畳半日記─この偉大でない日々」と表紙に記した大学ノートに、自らの偉大でない日々の記録を綴りはじめる。そこに別の「四畳半日記」が登場し、彼の未来が予言されているという内容である。腐れ大学生、軽羹的乙女、悪友的先輩、桃色動画、秘密結社、繰り返し要素、そして「不毛である」ことの肯定。清く正しく“腐れ大学生”ものであった。

怠惰な学生生活が日記としてユーモラスに描かれたかと思えば、『ノストラダムスの大予言』よりも遥かに的中率の高い予言の書が登場して不思議世界へ。そして最後はご都合主義的阿呆な大団円。短編でありながら森見作品のエッセンスが詰まっている。本人は「書き尽くした」としている腐れ大学生ものだが、三十郎氏的にはやはり「まだまだいける」と思うのである。特に“「恋している」とまでは敢えて言わない”珠子さんとの関係は秀逸であった。森見作品における成就しがちな恋とは違う、この関係にこそ三十郎氏はかつての自分を重ねられる。ここ掘れワンワン。

松本は、「この偉大でない日々が正当化されるその日まで私は日記を書く」「いずれ名を成したアカツキにはこの日記を適宜編集して、『松本清弘自伝』を執筆する予定」と記している(三日目には「この日記にも飽きてきたなり」)。三十郎氏も、この偉大でない鑑賞録が正当化されるその日までブログを書こう。何をもって「正当化された」とするのかは未定である。女子大学生の読者を獲得してキャーキャー言われるようになれば、『三十郎氏的映画鑑賞技法』なぞを執筆して乙女を導くのも悪くない──が、そんな日は来ない。分かっている。三十郎氏が三十郎氏である限り、このブログは不毛な空間であり続ける。ここは三十郎氏の四畳半なのだ。