オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ダウト・ゲーム』

Reasonable Doubt, 91min

監督:ピーター・ハウイット 出演:ドミニク・クーパーサミュエル・L・ジャクソン

★★

概要

飲酒運転で轢き逃げしただけなのに。

短評

飲酒運転と轢き逃げは“だけ”で済む話ではない。従って、大変なことになって然るべき男が大変なことになる話である。と言っても、大変になりそうで面白そうな導入部と魅力的なキャストに対して、中盤以降のグダグダなダメさと細部の甘さがネオンのようにギラギラと光っている。轢き逃げした主人公が「一体どこで道を間違えたのか……」と悩む映画ではない。観客を「(最初は面白かったのに)一体どこで道を間違えたのか……」と悩ませる映画である。

あらすじ

検察官として連戦連勝、妻との間に娘が生まれ、順風満帆なミッチ(ドミニク・クーパー)。ある日の飲み会の帰り、タクシーで帰るつもりが車上荒らしを心配して、つい自分で運転してしまう。パトカーにビビって脇道に曲がったところで男を轢いてしまうも、公衆電話から救急に通報して自らは逃走。翌日、轢かれた男を運んでいるところをデイヴィス(サミュエル・L・ジャクソン)が殺人の容疑者として逮捕されたというニュースを知る。事件の訴追を担当するのはミッチである。

感想

動揺するミッチによる裁判での追求はグダグダ、弁護側の証人としてミッチの兄ジミーが「俺が通報した」と現れたことでデイヴィスは無罪に。ここで引っ掛かるのは、声紋鑑定の専門家が裁判に出席していたのに、どうして他人の(似てすらいない)声を同一人物のものとして認定してしまったのかという点。この専門家は「黒人男性と白人男性の声の違いはプロの耳を誤魔化すことはできない」と断言しているのだが、終盤にデイヴィスがジミーとして通報してミッチを陥れようとするシーンでは回収されることのない伏線となり、そのままミッチが逮捕されている。KKKレベルの専門家だったのか。それにしても雑だな!

被害者に轢き逃げの傷だけでなく拷問を受けた痕が見られることを怪しんだミッチが、裁判後に轢き逃げ現場を訪れてデイヴィスに繋がるアイテムを発見する。ここで彼は「被害者はデイヴィスに拷問されていて逃げ出したところを自分が轢いたのだ」という推理を組み立てる。現場でゴチャゴチャやっている姿をデイヴィスに見られているのなら、保身を考えるとそれ以上の追求を止めるべきなのは明白である。しかし、それでは話が終わってしまう。だから、不毛な道へと突き進む。可哀想に。無能な脚本家のせいで無事に阿呆化されてしまった。

ミッチがデイヴィスの家に侵入し、とある事件の証拠を発見する。そして彼が逮捕された時に担当検察官に対して「あいつの家を調べてくれ。床下に証拠がある」と迫るも、「無断で侵入したの?あなたが仕込んだんじゃないの?」と返り討ちにされる。ド素人でも想像のつきそうなことを……。彼は有能なはずではなかったのか。これではやはり阿呆である。そもそも警察から送検されていない事件の捜査権限についてもどうなっているのだろう。ミッチの窮地に駆けつけた検察が犯人を撃つシーンもあるのだが、警察と検察の区別はどう理解されているのだろうか。

サミュエル・L・ジャクソン本人のキャラクター頼りな部分があるのはよいとしても、もう少し見せ場を用意してあげないと。これではミッチの阿呆ぶりばかりが目についてダメだった。スリラーとしては決定的に欠けている緊張感のおかげで、平和に眺めて安心してツッコめる一作ではあった。

ダウト・ゲーム(字幕版)

ダウト・ゲーム(字幕版)

  • メディア: Prime Video