オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ハッシュ・マネー』

Hush Money, 88min

監督:テレル・ラモント 出演:ジョシュア・レイ、ケネディ・ウェイト

★★★

概要

売れない画家が誘拐の身代金で借金を返そうとする話。

短評

誘拐という難易度の高い犯罪を阿呆が思いつきで決行するとどうなるのかの見本市である。主人公が「俺がバカだと!」と憤るシーンがあるのだが、思わず「バカだよ!」と返したくなる。あまりにも阿呆で、あまりにも不運。主人公のダメっぷりを笑いながら楽しんでいたら、最後は少しだけ同情して切なくなるような映画であった。誘拐には高い計画性が必要である。阿呆が一攫千金を狙うなら、何の犯罪が適しているのだろう。

あらすじ

美術教師の職を失い、売れない画家(=無職)となったダグは金に困っていた。彼はギャンブルで負ける原因となった野球選手の娘ケネディケネディ・ウェイト)を誘拐し、20万ドルの身代金を要求する。ケネディの身柄を確保したところまでは良かったものの、その後は何一つ上手くいかない。

感想

後学のためにダグの失敗の数々を列記しておこう。もし「誘拐で一攫千金を狙うんだ!」という阿呆がいれば、彼とは逆の行動を取ることが推奨される(当然誘拐をやめることが最も推奨される)。何から何までダメである。ジャンルとしてはスリラーになるのだと思うが、完全にコメディとして笑うしかないような阿呆であった。

車のトランクに押し込んだケネディがギャーギャー騒ぐので様子を見に行くと、目出し帽を被るのを忘れて顔を見られてしまう。彼女が喘息の発作で苦しんでいるため助手席に乗せると、あろうことか「俺はダグだ」と自己紹介。発作に苦しむ彼女のために吸引器を買いに走れば金が足りない。監禁する予定だった場所は、仲間が忘れて鍵が掛かったままなので自宅に連れ帰る。荷物の配達員に彼女を見られて二人目を監禁する羽目に(配達員が「俺の弟もダグ」と無駄口を叩くのが好き)。ダクトテープの備蓄が足りず一人しか口を塞げない。配達員に反撃され、その間にケネディが逃亡。なんとかケネディを連れ帰るものの金の受け渡し方法が未定。金を受け取っても中身をしっかり確認せず、仕掛けられた発信機で警察が到着。成功する要素が何一つなかった。仮に成功しても逮捕される要素しかなかった。

不運もあるが、基本的にはダグがダメな奴すぎる。そもそもどうして誘拐したのかと言えば、借金のカタに娘を取られて身代金が必要なのであって、どうしてそんな借金があるのかと言えば、元からあった借金をギャンブルで返すために更に借金を重ねた結果なのである。それでも絵の話でケネディと少しだけ心を通わせちゃったりして根が悪い人間ではないことが分かるのだが、彼が無能故に犯さざるを得なかった犯罪(主に暴行)を考えれば、立派な悪党である。度を越した無能は罪なのだ。

ケネディ逃亡時に逃げ込んだ家の元看護師と息子がダグよりもヤバい奴で……というエピソードがある。この家の話だけでサイコホラーが成立しそうなのだが、あえて引っ張らなかったのはギャグだからなのだろうか。バスタブにいた子供は死体なのか。ダグよりもよっぽどヤバい奴がいますよ、警察さん!

ケネディがトイレに行く時、“小”であれば後ろを向いてトイレ内に留まるつもりだったダグが、“大”なので一旦外に出る。この心理的抵抗感は何なのだろう。

時給9ドルの仕事をしながら絵を描き続けるダグを妻が称した「オイル交換するピカソ」という章題のセンスが良かった。

ケネディは流石メジャーリーガーの娘という感じで、手脚がスラッと伸びた高身長の良スタイルの持ち主だった。

ハッシュ・マネー(字幕版)

ハッシュ・マネー(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: Prime Video