オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ターミネーター:ニュー・フェイト』

Terminator: Dark Fate, 128min

監督:ティム・ミラー 出演:アーノルド・シュワルツェネッガーリンダ・ハミルトン

★★★

概要

ラテン系ターミネーターと強化人間が現代にやって来る話。

短評

旧作のストーリーをなぞって、価値観だけを現代風に上書きした一作(ホワイトウォッシュのような名称が欲しい)。一応『ターミネーター2』の“正当”な続編ということになっているが、三十郎氏は決してこれを信じない。これだけリブートを繰り返せば、もはやオオカミ少年である。新たに支配的な価値観が生まれるかシュワちゃんが亡くなるかすれば再度リブートするのだろう(まだ需要があれば)。お金が掛かっているので迫力あるアクションは楽しめるが、映画館で観ていればストーリーの不満だけが残ったに違いない。程よく期待のハードルが下がっていて助かった。

あらすじ

1997年の“審判の日”は防がれた──が、翌年、サラ(リンダ・ハミルトン)とジョン(エドワード・ファーロング)の元にターミネーターが現れ、ジョンは殺害されてしまう。それから20年後、メキシコシティに強化人間のグレース(マッケンジー・デイヴィス)と最新ターミネーターREV-9(ガブリエル・ルナ)が現れ、工場労働者のダニー(ナタリア・レイエス)を巡って争いを繰り広げる。

感想

将来重要になる人物を殺害するために未来からターミネーターが来て、それを阻止するためにレジスタンスの人間が送り込まれる。一作目の『ターミネーター』と同じ話である。つまり、審判の日を阻止しても次の審判の日が来るだけで堂々巡りである。これは『ターミネーター3』と似た展開と言えるだろう。更に本作では、ジョンが殺されても別のリーダーが誕生することが明らかとなる。

これを人間側から考えると、無理してジョン(又は次のリーダー)を守る必要がなるなる。機械側から考えても、無理してジョン(又は次のリーダー)を殺す必要がなくなる。彼らを殺しても次が出てくるだけなのだから無意味ではないか。人類にできることは、どうしたってAIを開発してしまう人類そのものを滅ぼしてしまうくらいだろう。「新作を作りたい」という商業的理由と「女性リーダーを誕生させたい」という社会的要請によりシリーズの設定の根幹が死んでしまった。この理屈で言えば、司令官は我が身可愛さに部下を死地に送り込んだだけであり、本作は続編がなければ何もしていない等しい話である(あっても次が出て無意味なのだが)。

話には最初から期待していなかったので落胆は小さい。負け戦である。最大の問題は最新型ターミネーターREV-9を演じるガブリエル・ルナの配役である。なんと無個性な。気の良さそうなラテン系である。ターミネーターの目的からすると合理的なのかもしれないが、映画の悪役としては全く怖くない。まるで絶望感がない。無駄口を叩くのもよくない。ビジュアルについては、戦時にダニーのようなちんちくりんがリーダーではどうにも頼りない。20年以上経過している未来編で見た目が同じなのも雑である。映像メディアにおける記号としてのイメージの力を軽視しすぎだと思う。

REV-9の分身モードは面白かった(REV-7のDr.オクトパス化も好き)。液体金属の表皮が金属というよりも『ヴェノム』のシンビオートだったのは気になったが、旧シリーズとの違いを出すためだろう。しかし、内骨格のせいで鎖に捕まって動けなってしまうのでは、全身液体金属のT-1000よりも実質的に弱体化していないか。T-1000ならタービンに巻き込まれることもなかっただろうし、巻き込まれても平気だっただろう。見た目も能力も劣化している。ただ分身するだけでT-Xのような特殊武器もないし、スカイネットの方がリージョンより優秀だったということなのか。これも映画的には物足りない。未来から来てもサーバーへの侵入が物理だったのは笑った。進化してないな。大金を投じた割には動きが軽すぎてCG丸出しなシーンがあるのも残念。

エドワード・ファーロングがどうやって出演しているのかが注目点だったが、CGで若い頃の姿がそのまま描かれていた。リンダ・ハミルトンシュワちゃんも若返っている。この手法については、本人が存命の内に許可を出すのであればよいが、死後に権利所有者(何の権利だ!)の許可によって使用するのは禁じ手だと思う。本人の意思が介在しない場合はディープフェイク・ポルノと同等の行為である。

マッケンジー・デイヴィスは長身で筋肉もあって逞しいが、「走る」「投げる」の基本動作を見る限りでは運動の苦手な人なのだと思う。彼女のキャラクターは“強い女”のダメなパターンで、とくかく男勝りでさえあればよいというタイプ(この価値観で強さを描く限り、現実の女性は男性よりも劣った存在でしかありえなくなってしまう)。彼女は殴る必要のない相手まで殴り飛ばしており、これでは人間だという設定の意味がない。ターミネーターに匹敵する横暴さである。彼女の動作は明らかにコンピューターで制御されているのだが、クラックされる恐れはないのだろうか。

もっともキャラクターについてはシュワちゃんの方がよっぽど酷い。機械のくせに「任務を終えて生きる目的がなくなった。DV被害の母子を助けて生きる目的ができた」と雑に人間の味方になっていて、彼が主役の映画ではないことをまざまざと思い知らされた。

最も気に入ったのは、シュワちゃんが巨大な滑り台で遊ぶシーン。

ターミネーター:ニュー・フェイト (字幕版)

ターミネーター:ニュー・フェイト (字幕版)

  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: Prime Video