オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『汚名』

Notorious, 101min

監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演:ケーリー・グラントイングリッド・バーグマン

★★★★

概要

ナチスのスパイの娘がアメリカのスパイになる話。

短評

愛と任務の間で揺れる男女の姿を描いたサスペンス。立ち上がりこそ静かなものの、結婚パーティーの辺りからはあらゆる局面に重苦しい緊張感が漲るような仕掛けが施されている。ヒッチコックらしいサスペンスはもちろんのこと、ヒッチコックらしくないメロドラマも(多少雑ではありながら)魅力的である。本作のマクガフィンはワインボトルの中身か。

あらすじ

国家反逆罪に問われ、懲役20年の判決を受けたヒューバーマン。自暴自棄になって飲酒運転で暴走する彼の娘アリシアイングリッド・バーグマン)を介抱する男デブリン(ケーリー・グラント)は、FBIの捜査官であり、彼女を監視しているのだった。彼はアリシアにブラジルで暗躍するナチスの組織を見つけるための協力を求める。

感想

美男と美女が揃えば恋に落ちるが、美女の方は潜入任務で標的の妻になるという物語。前者の「恋に落ちる」の部分は「恋に理由なんて要らないぜ!」的なノリでしかないのだが、後者の方は意外にも繊細な演出がなされていた。「セバスチャンにプロポーズされた」と上司に報告するアリシアに対して、デブリンがそれとなく反対するような煮え切らない態度を見せる。それまでのつれない態度は仕事優先なのかと思わせられるが、本当に愛しているけれど(任務もあるので)素直になれないことが分かる。この葛藤があることで、二人がただ惹かれ合うだけよりも後半のサスペンスがぐっと引き締まる。

後半は見所の連続である。アリシアが鍵を盗むのがバレるのか、シャンパンは足りるのか、ボトルの詰め替えは間に合うのか──と「対セバスチャン」のメインのサスペンスが進行し、遂にバレてしまった後も全面対決とはならないのが凄い。セバスチャンも自分が嵌められたことを仲間たちに知られると困るので(ここで前半の暗殺が活きる)、彼がどのような行動に出るのか、アリシアはどうなってしまうのかという静かなサスペンスがジリジリと続くのである。ラストの階段での攻防も静かなのに、何も起きないが故の漲る緊張感がある。

イングリッド・バーグマンケーリー・グラント長回しでチュッチュとイチャイチャしている羨ましいシーンは、当時の「3秒以上のキスは禁止」というルールを回避するために(唇が)くっ付いたり離れたりを繰り返したのだとか。ずっとくっ付いているよりも「片時も離れたくない」感が出ていて、より一層羨ましい。イングリッド・バーグマンは本当に綺麗である。彼女が敵に抱かれているなんて想像しただけで発狂してしまうので、三十郎氏に諜報の仕事は務まりそうにない。それ以前に美男美女が理由なく恋に落ちるという前提条件を満たしていない。

競馬場のシーンは『M:I-2』の元ネタか。アクション一辺倒なイメージのジョン・ウーヒッチコックが好きなんだな。

汚名(字幕版)

汚名(字幕版)

  • メディア: Prime Video