オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グッバイ・ゴダール!』

Le Redoutable(Godard Mon Amour), 108min

監督:ミシェル・アザナヴィシウス 出演:ステイシー・マーティンルイ・ガレル

★★★

概要

ゴダールと二番目の妻が結婚して離婚する話。

短評

ステイシー・マーティンがひたすらに可憐で眼福な一作。ゴダール本人の映画と違って難解でないのが良い。正直ゴダールのことなんてどうでもいいし、彼女が演じるアンヌ・ヴィアゼムスキーのこともどうでもいい。可愛らしい顔、スラッと伸びた手脚、プリっと盛り上がった裸体(ついでに言えば、本作で見せるショートカットも三十郎氏の好み)。パーフェクトである。女神の如しである。いや、女神だってここまで美しくないだろう。映画はゴダール的手法でオマージュを捧げつつもゴダールを情けない男として描いており、監督はゴダールのことが好きなの嫌いなのかと戸惑うものの、離婚した妻の自伝が原作とのことで、ある意味で当然の描かれ方なのであった。

あらすじ

『中国女』に主演し、ジャン=リュック・ゴダールルイ・ガレル)の妻となったアンヌ・ヴィアゼムスキーステイシー・マーティン)。“映画の概念を変えた男”との結婚生活は刺激に満ちた幸せなものとなるはずだったが、政治活動に傾倒していくゴダールとの間にすれ違いが生じはじめる。

感想

学生時代の三十郎氏が辛酸をなめた『中国女』が、劇中でも酷い扱いを受けていることに安心した。中国本土での上映を目指して大使館で試写すれば「最低の映画」「愚かな反動派は革命を理解していない」と酷評され、映画祭で上映すれば観客が居眠りしたり席を立ったりする。新聞の批評欄には「壮大なる失敗作」「果てしない会話にウンザリ」の文字が踊る。主演のアンヌだってゴダールの前では共産主義の本を読んで勉強しているふりをするが、ノーベル賞作家モーリアックの孫というブルジョア出身の彼女も革命になんて興味がなかったりする。三十郎氏がゴダールを理解できなかっただけではなかったのだ。皆理解できなかったのだ。よかったよかった。

それでも劇中で上映されているステイシー・マーティン版の『中国女』なら観てみたいかなと思わなくもない。ステイシー・マーティンは、クッションで前を隠してコーヒーを飲んでいるだけでも画になる。ベッドやビーチに全裸でうつ伏せに横たわっている時に尻の描く曲線は、曲線という言葉がこれを表現するために存在しているかのようである。脚を組んでミニスカートから覗く太股も素晴らしい。『男の種』の出演にあたって「必然性があるならヌードになる」と必然性なくヌードを披露しているのも素敵である。嗚呼、麗しのステイシー・マーティン。彼女の一挙手一投足、全てのパーツが愛おしい。本家『中国女』のアンヌ・ヴィアゼムスキーはこんなにチャーミングだっただろうか。途中で睡魔に屈したので覚えていない。

周囲を見下して講釈を垂れる頭でっかちなインテリ──これが本作で描かれるゴダール像である。権力者には強気なくせに、自分よりも血気盛んな学生たちには反論一つできない。デモに参加すればひ弱な身体を突き飛ばされてメガネを失い(三度)、メガネの価格が上がると参加を見送るようになる。自身が扇動した革命の結果ストライキが起きると、ガソリンを入手できなくなって愚痴を言う。別れを突きつけられると自殺未遂。映画のラストでは『東風』という毛沢東的西部劇を“民主主義的に”撮影しているのだが、明らかに上手くいっていない。

従来の映画を破壊することで名を上げた男が、「人とは違うことをする」という言葉の自縄自縛に陥っている印象を受けた。なるべく他者に受け入れられなさそうなことに挑戦しているはずなのに、受け入れられないことで悩んでいる。これでは天才故の苦悩というよりも阿呆である。

登場人物がカメラに語りかけたり、文字列によるメッセージを唐突に挿入するのはゴダールの演出手法へのオマージュだと思うのだが(ゴダールの扱いを考えるとオマージュではなくネタなのか)、字幕と台詞で本音と建前を表現する手法もゴダール作品が初出なのだろうか。てっきり『アニー・ホール』だとばかり思っていた。壁の落書きには字幕がついていない箇所があり意味が分からなかったのだが、訳が分かっても意味は分からないだろうから構わない。各章のタイトルはゴダール作品をもじったものなのだろうか。『軽蔑ピエロ』なんかは分かりやすいが、他も全部元ネタがあるのか。

ステイシー・マーティンが素敵すぎて久々にPCの壁紙を変更した。

グッバイ・ゴダール!(字幕版)

グッバイ・ゴダール!(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: Prime Video
 
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