オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ディストピア パンドラの少女』

The Girl with All the Gifts, 110min

監督:コーム・マッカーシー 出演:セニア・ナニュア、ジェマ・アータートン

★★★

概要

ゾンビ少女が世界を変える話。

短評

凝った設定のゾンビ映画。色々と「それはどうなの?」と疑問に感じる点がなくもないが、パニック系のホラー映画に新鮮な視点を提供するゾンビの存在が面白かった。ゾンビは身体能力の高いタイプで、床の血を舐めるシーン等に迫力を感じるが、どちらかと言えば活動停止モードでユラユラしている姿の方が怖かった。

あらすじ

軍の地下施設に監禁され、車椅子に拘束された状態で授業を受ける少年少女たち。彼らは“ハングリーズ”と呼ばれるゾンビから誕生した、知性の残る第二世代である。そして、ワクチン開発のための原料なのである。コールドウェル博士(グレン・クローズ)が、その内の一人メラニー(セニア・ナニュア)を解剖しようとしている時に施設の防御が突破され、ジャスティノー先生(ジェマ・アータートン)たちと共に施設を脱出する。

感想

ゾンビ少女が世界を救う話なのかと思ったら、世界を変えてしまう話だった。メラニーは邦題の通りにパンドラの箱を開いてしまうわけだが、最後に残される希望は人類にとってのものではないというのがポイントである。彼女が行動に出る直前の会話の中で、コールドウェルは彼女が人間と同じように生きていると(恐らくは説得のための方便として)認める。そして、「生きてるなら人間のために犠牲になる必要なくない?」という理屈で新世界の樹立が選択される。もしゾンビだと断言していたら違う展開になっていたのだろうか。それでも「違う種族のために犠牲になる必要なくない?」となりそうだが。

ゾンビはタイワンアリ茸の真菌が脳に菌糸を張ることで発症するという設定である。それが次世代を残すために頭から樹木が生えてきて胞子嚢を形成する。胞子嚢が開くと、ウイルスが運ばれて空気感染するとのことである。字幕の問題なのか三十郎氏の自然科学の知識の問題なのか、菌とウイルスのどちらが原因なのかハッキリしてほしい。

動物には感染しない設定なのだろうか。胞子嚢を開いて人間の世界を滅ぼしてしまうと、ゾンビの餌になる人間もいなくなってしまう。これではゾンビも淘汰されかねない。人間がいてこそのゾンビである。

単なる教師であるはずのジャスティノーが、やたらと強気なのは不自然に感じた。あの状況下であれば指揮系統に逆らう者はポアされかねないだろう。ワクチン開発の権限を持つはずのコールドウェルが、メラニーの利用に関して彼女にお伺いを立てるのはおかしい。妊娠可能な女性が特別に優遇されているという事情でもあるのだろうか。そうだとしてもワクチン開発の妨害を許す程の特権が与えられるはずはないと思う。

軍人たちがメラニーに透明なフェイスマスクを装着させているが、自分で着脱可能なものをつけても意味がないだろう。

以上のように疑問や不満の多い一作ではあるものの、設定の新規性に由来するゾンビの行動やギリシア神話をベースにした人類淘汰の描き方といった魅力も多い一作である。

ディストピア パンドラの少女(字幕版)

ディストピア パンドラの少女(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: Prime Video
 
パンドラの少女

パンドラの少女