オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『少女は悪魔を待ちわびて』

널 기다리며(Missing You), 108min

監督:モ・ホンジン 出演:シム・ウンギョン、キム・ソンオ

★★

概要

父親殺しの犯人に娘が復讐する話。

短評

シリアスな復讐劇を装ってはいるが、ほとんどハチャメチャなアクション映画である。主人公の父が殺される序盤のシーンでは、犯人が左手で首の右側を刺しているように見えるのに、父は首の左側から出血していて「細部の詰めが甘いな」と思ったら、甘いのは細部の詰めだけじゃなかった。証拠不十分で有罪にならなかった犯人を冤罪で有罪にしてしまうのでは、特に焦点の当てられていない韓国司法の機能不全の方を主題に据えるべきある。

あらすじ

七件の連続殺人事件の内の六件が証拠不十分となり、一件だけが有罪判決を受けたキム・ギボム(キム・ソンオ)。判決を受けて荒れる法廷に一人の少女がいた。彼女の名はナム・ヒジュ(成長後がシム・ウンギョン)。彼女は復讐を誓い、15年後のギボムの出所に合わせて計画を始動するが、新たな連続殺人事件が発生する。

感想

冒頭の傷の位置に加え、出所したばかりのギボムがスマホを使いこなしているのも不自然である。あまり細かいことを気にするレベルの映画でないことが早々に判明してしまった。その後、ギボムはモーテルに宿を取ってエスコート嬢をお呼び出し。最後に女を殺した時の状況を再現する変態プレイである。このサイコパスは随分と人生を楽しんでいる。演じているキム・ソンオの引き締まった肉体が印象的だった。囚人トレーニングは凄いな。

彼が警察に追われるシーンの中で、銃を持った相手に突撃する一幕がある。『アイリッシュマン』でホッファが言ってたやつだ!「銃なら突撃。ナイフなら逃げろ」。実践する勇気もないし機会もないことを願うが、いざという時のために覚えておいて損はないだろう。疾走するシーンの多い一作だった。

対するヒジュ。ニーチェの格言を記した付箋を壁一面に張り巡らし(長期間張ったままだと自然に剥がれ落ちると思う)、床一面が新聞のスクラップで覆われた部屋に住んでいる。事件当時父の部下だった警察に可愛がられて良い子然として暮らしているが、こいつもなかなかサイコな感じな女である。しかし、そのサイコぶりが発揮されるのが、犯人とは無関係な義父殺害というのはいかがなものだろう(惨忍なだけでサイコ的な計画性もない)。この一件で彼女が逮捕されないのではギボムのことを責められないし、母親の死も彼女に責任があるだろう。

結局は自らの死をもって犯人に復讐するというアイディアありきの一作だと思うのだが、警察が真面目に働いて首輪の出処を調査すれば、ギボムの冤罪は晴れるだろう。連続殺人事件の犯人が出所後に事件を起こして再逮捕となればマスコミも大きく報道するだろうし、そこで被害者の顔写真が出れば店主も気付く。ヒジュの計画も映画の制作者も、もっと細部を詰めないと。

ギボム、ヒジュ、警察の他に、もう一人の犯人というキープレーヤー(七三分けの小太り)がいる。この展開には意外性があったが、ただでさえまとまりの悪いプロットを余計に混乱させたようにも感じる。彼とギボムの扉越しの戦いは緊張感があって好きだった。