オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『誘拐の掟』

A Walk Among the Tombstones, 113min

監督:スコット・フランク 出演:リーアム・ニーソンボイド・ホルブルック

★★★

概要

リーアム・ニーソンが誘拐犯兼殺人犯を追う話。

短評

リーアム・ニーソンが珍しくそれほど“最強のおっさん”じゃない一作。てっきりそっち系統の映画だと思っていたので意外だった。「リーアム・ニーソン=最強のおっさん」の図式が完全に頭に刷り込まれてしまっている。映画自体は可もなく不可もないハードボイルドものという感じ。ローレンス・ブロックの原作マット・スカダー・シリーズは長編17作を数える人気シリーズのようである。

あらすじ

1999年、ニューヨーク。元刑事で元アル中の無免許私立探偵マット・スカダー(リーアム・ニーソン)。アル中仲間のピーター(ボイド・ホルブルック)から弟ケニー(ダン・スティーヴンス)を助けてほしいと頼まれる。ケニーから話を聞くと、彼の妻キャリーが誘拐されて身代金40万ドルを払ったが、妻は殺害されたのだと言う。調べを進めると、犯人は単なる誘拐犯ではなく猟奇的な殺人犯で……。

感想

最強のおっさんじゃないと言っても、そこそこ万能で事件を解決しちゃう辺りはリーアム・ニーソンである。図書館で出会った家出少年TJ(食事と健康に気を遣っている。肉がダメでパンケーキがOKなのは病気との関連なのか)と共に常に冷静沈着に調査を進めていく。この冷静さと多少の世捨て人感がハードボイルドなのだが、特別に格好いいと感じさせるような描写はなく、少々印象が薄かった。

犯人のレイ(デヴィッド・ハーパー)には“乳房切断趣味”がある──と言っても映像で表現されるわけではないし、映画が猟奇的なサイコ・スリラーになるわけでもない。あくまで物語の背景としての描写である。犯人探しのミステリーとして綺麗に落ちるわけでもない。この辺りのジャンル映画としての微妙な物足りなさがハードボイルドものたる所以なのだろうか。「ギムレットには早すぎる」の状況が知りたくて『ロング・グッドバイ』(村上春樹訳)を読んだ時にも、同じように微妙にスッキリしない読後感があったように記憶している。

三十郎氏は、“不味いインスタントコーヒーで無理やり目を覚ます”という行動がハードボイルドなのだと信じ込んで実践している。シブいおっさんに憧れているのだが、ハードボイルドものというジャンル自体は少し苦手だったりする。上述の微妙な物足りなさは見所をボカされて釣られたような感じがするし、意味ありげな描写の意味が分からないことが多いのも辛い。ハードボイルドなおっさんへの道のりは長い。

犯人がキャリーの次の標的ルシアちゃん(ダニエル・ローズ・ラッセル)を見つけた時に、スローモーションとポップ・ミュージックの組み合わせで、“恋に落ちた瞬間”みたいになっているのが可笑しかった。確かに可愛いけれどそこまでやるか。映画全体の暗い雰囲気から明らかに浮いているのが良い。三十郎氏は赤いコートを着こなせてしまう美女や美少女が好きである。“似合う”のではなく“着こなせてしまう”のが重要だという点を強調しておきたい。別に赤いコートが好きなわけではない。明らかに周囲から浮いて不自然になりがちな赤いコートを、それが自然であるかのように感じさせる説得力に惹かれるのである。

誘拐の掟(字幕版)

誘拐の掟(字幕版)

  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: Prime Video
 
獣たちの墓 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)

獣たちの墓 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)