オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブラック・クランズマン』

BlacKkKlansman, 135min

監督:スパイク・リー 出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライヴァー

他:アカデミー賞脚色賞(スパイク・リー他)

★★★

概要

黒人刑事がKKKに電話して白人刑事が潜入する話。

短評

「これ絶対バレるだろ」と思うものの、実話だというのだから仕方がない。「最初に話したウォルター以外にロンが電話を続ける意味がないだろう」と思うものの、これも実話なのだから仕方がない。スパイク・リーらしい直截な物言いの映画でありながら、設定が抜群に面白い。展開もちゃんとエンタメしている。そして、映画が一応のハッピーエンドを見せたかと思えば、即座に冷や水を浴びせて現実を突き付ける辺りは流石スパイク・リーだと思った。

あらすじ

コロラド・スプリングス初の黒人警官となったロン・ストールワース(ジョン・デヴィッド・ワシントン)。「資料室は嫌だ。潜入捜査がしたい」と希望するロンに、ブラック・パンサー党元幹部の演説会への潜入任務が指示される。見事任務を成功させたロンは、新聞でKKKの構成員募集の広告を見つけて電話してみると、白人だと思われてKKK接触することになる。当然彼は会えないので、代わりに同僚のフリップ(アダム・ドライヴァー)を送り込む。

感想

電話の時点で話し方が黒人のものだと分からないのか。ロンとフリップの話し方が別人のものだと分からないのか。分からなかったのだろう。これは、KKKの構成員が阿呆なホワイト・トラッシュであることを強調すると同時に、黒人のことをよく知らないまま敵視していることを示すエピソードだと思う。黒人の過激派にも同じことが言えるのかもしれないが、自分たちの不遇が先にあり、そこに都合のよい仮想敵を生み出して戦っているような印象を受ける。真に戦うべき相手は、彼らに勝手に戦わせておいた方が都合のよい連中である。

アイ,トーニャ』で見事なまでの阿呆役を演じたポール・ウォルター・ハウザーが、本作でも見事に阿呆を演じている。しかし、彼が演じている男は文字を読むことができる。KKK内の過激派フェリックスは文字が読めない。ド級の阿呆であり、公教育の不備の犠牲者である。彼のような末端の過激派は、デューク(役者と本人映像が似ていた)のような幹部に利用されている存在と言えるだろう。フェリックスは文字が読めないという極端な形で表現されているが、得られる情報が少ない人ほど同質性の高いの情報にばかり接し続けて先鋭化していくことになる。これは白人至上主義者に限った話ではない。

終盤の廊下のシーンで画質が急に荒くなるのでブラックスプロイテーション的なノリをやるのかと思ったら、真逆の展開である。ここでKKKの存続を示し、現実の映像を挿入してくるとは思わなかった。スパイク・リーにしてはバランスの取れた映画だったのに、最後に“らしさ”を見せてくれる。しかし、これでいいのだと思う。映画の中でKKKを懲らしめて気持ちよくなっても、現実世界の情勢が悪化していては何の意味もない。それを観客に思い出させるための演出だろう。その“気持ちよさ”とは、正に『グリーンブック』に描かれていたものに相違ない。スパイク・リーアカデミー賞授賞式の会場から立ち去った意図も、本作のラストと同じものだろう。彼の目には、劇中に登場する『國民の創生』とまでは言わなくても、同じような存在として映っているのかもしれない。

ロンを演じたジョン・デヴィッド・ワシントンは、ドラマ『ボーラーズ』でアメフト選手を演じていたのを覚えているが、本人もラムズに所属した元アメフト選手なのか(役はWR、本人はRB)。引退後にドラマ、映画で大役を得て、次はクリストファー・ノーランの新作で主演である。怪物的巨躯を活かしたキワモノ的アクションスターでもないのに凄いキャリアだな。

資料室にある雑誌の表紙を飾っているシビル・シェパードは、『タクシードライバー』のベッツィーである。映画は1972年の話なので、彼女はまだベッツィーではない。話に出てくる『ラスト・ショー』でおっぱいを拝めるようである。映画そのものの評価も高いみたいだし、是非観てみたい。

ブラック・クランズマン (字幕版)

ブラック・クランズマン (字幕版)

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
 
ブラック・クランズマン

ブラック・クランズマン