オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『人魚姫』

美人魚, 93min

監督:チャウ・シンチー 出演:リン・ユン、ダン・チャオ

★★

概要

人魚が環境破壊に抵抗する話。

短評

中国からこんな環境保護の啓発的な映画が出てきて、しかもアジアの興行収入歴代一位となるくらいヒットしたというのが意外だった。『少林サッカー』のチャウ・シンチー監督が、コメディ、ロマンス、アクション、環境保護メッセージのてんこ盛りで送る一作である。人魚のシャンシャン関連の描写は笑えるものが多かったが、他は笑いのノリが合わず。CGも頑張ってはいるがイマイチ。陳腐さが逆にクセに……ならなかった。そこまで悪くはないが好きにもなれなかった。

あらすじ

青羅湾を買収し、埋め立てを企む富豪のリウ(ダン・チャオ)。彼は凶悪なソナーを使って湾のイルカを一掃し、保護区域の指定を外してしまう。それに怒ったのが青羅湾に住む人魚たち。彼らはシャンシャン(リン・ユン)のヒレを改造して人間の美少女に偽装し、リウの元に送り込む暗殺計画を始動する。

感想

シャンシャンを演じているリン・ユンは、魚顔系なのに可愛いという不思議な美少女である。可愛い彼女が、ドロドロに崩れたメイクで化け物扱いされたり、ウニが顔に刺さったまま戦ったり、ガラスを割る歌声で歌ったりと奮闘している。可愛くて笑える。これは大変に素敵なことである。それだけでも本作には観る価値があると言えるくらいには可愛い。リン・ユンが元から可愛いのか、愛嬌たっぷりなキャラクターあってこそなのか、それとも相乗効果なのか。この際どうでもよい。だって可愛いのだから。彼女がリウをお気に入りのチキン屋に連れていき、二人が歌い出してミュージカル化するシーンが本作のハイライトである。周囲の客の戸惑う表情に笑いを堪えられない。

そんな可愛いシャンシャンに接近されると、男は誰でも恋に落ちる。後はお決まりの物語である。リウは文句を言いながらもチキン屋について来るし、根は良い奴なのである。付け髭だった髭が細すぎて変だと思うのだが、あれは格好いいのだろうか。彼は改心して、シャンシャンに言われた言葉を最後に繰り返す「きれいな水と空気がなければ、いくら稼いでも意味がない」。全くその通りなのだが、稼いでいる本人ほど環境汚染の影響を受けづらいというジレンマ。こんな直接的な主張のある映画がヒットするくらいに中国では環境への関心が高まっているのだろうか。

人魚と言えば女性のイメージだが、本作には男の人魚も登場する。下半身も魚だけではなく、タコの者もいる(これでは半分魚ではない)。そう言えば、人魚の生殖システムはどうなっているのだろう。その答えが本作にあるわけではないが、タコ兄と呼ばれる雄の個体には陰茎がついていなかった。彼が三本足となりズボンを履くと、真ん中の一本が陰茎状態でブラブラしているが、陰茎としての機能は持っているまい。

終盤の活劇パートもサービス精神に富んでいるが、「ババアもっと早く出てこいよ」とか「水中にいる人魚に銃撃を浴びせても水の抵抗で威力が激減するのでは?(これについての物理学的な事実関係はよく知らない)」とか「捕獲が目的なのに殺しすぎだろ」とツッコミどろこが多い。もっともツッコんだら負けである。

第一義的には環境問題を扱っているのだと思うが、イルカや人魚の虐殺は少数民族弾圧の隠喩でもあるのだろうか。「元は同じ類人猿が進化の過程で姿を変えた」という人魚についての説明もある。もしそうだとしても監督は名言できないのだろうけど。

人魚姫(字幕版)

人魚姫(字幕版)

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