オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ディバイナー 戦禍に光を求めて』

The Water Deviner, 111min

監督:ラッセル・クロウ 出演:ラッセル・クロウオルガ・キュリレンコ

★★★

概要

オーストラリアからトルコへ息子を探しに行く話。

短評

ラッセル・クロウの初監督品(主演も兼任)。ガリポリの戦いという第一次世界大戦におけるオーストラリア・ニュージーランドの合同軍(ANZAC)とオスマン帝国の戦争を背景にした物語である。三十郎氏はこの戦いについて知らなかったので、オーストラリアにとって重要な歴史の一部を知ることができてよかった。父子の物語自体は具体的な背景を問わず普遍的なものであるため、とっつきにくいということもなかったように思う。

あらすじ

第一次世界大戦ガリポリの戦いに従軍したコナー家の三兄弟。戦争が終わっても彼らは故郷オーストラリアに帰ってこず、父ジョシュア(ラッセル・クロウ)は死んだものと諦めているが、母リジーの心は壊れ自殺してしまう。ジョシュアはリジーの墓標に「息子を連れて帰る」と誓い、トルコを目指す。

感想

死んでいることが確定的であっても、“的”のままでは辛いものなのだな。“死んだ”とは異なり、区切りをつけられない難しさがあるのだろう。この感情は当事者でない三十郎氏には理解しづらいところがあるものの、ちょうど有本恵子さんの母嘉代子さん逝去のニュースがあったばかりなので、壊れてしまったリジーや遠くトルコで奮闘するジョシュアの姿には考えさせられるところがあった。ストーリー全体としては粗が目立つものの、敵国との融和や悲劇の乗り越えといった戦後の人間模様が、希望をもって温かく描かれていた。

スター俳優が初監督&主演となると自身を過度にヒーロー化しないかが心配だが、本作はギリギリのラインだろうか。そういう面が多分にありはするものの、むしろストーリーのご都合主義によって話が展開することが多い方が気になった。とは言え、息子を失って大人しくしているだけではラッセル・クロウが主演を務める意味がない。それならもっと繊細な(=ひ弱な)俳優にやらせた方がよい。彼は要所要所で乱暴になり(銃を持った軍人にクリケットのバットで立ち向かうシーンがベスト)、彼らしさを楽しませてくれた。

オルガ・キュリレンコウクライナ出身なのだが、黒海を挟んで向かい側のトルコ人にはどう見えるのだろう。一応地続きなので、民族的な繋がりもあったりするのだろうか。彼女はともかくイザベル・ルーカストルコ人には見えないが、そもそもどういう役だったのだろうか。客なのか従業員なのか。オーストラリア人のコネで出演したのかもしれないが、意味の見えないキャストだった。もっともオルガ・キュリレンコ演じるアイシェとのロマンスも、話を散漫に、そして陳腐化させるだけだったように感じる。

三十郎氏は本作を観て「へぇ~こんな歴史があったのか」と思い、敵軍であったハーサン少佐が協力してくれる展開をアツいと感じた。一方で、ギリシャ等の当事国からはトルコが美化されていることに対する批判があるのだとか。歴史の捉え方や扱い方は難しい。しかし、知らない者に対しては映画のプロパガンダ効果が抜群で、作ったもの勝ちだなという気もする。もっとも批判されているアルメニア人虐殺を扱った『消えた声が、その名を呼ぶ』を観たことがあるのに(鳥頭故に)忘れていたのだから、一時的でなく心に残り続けるまでの効果を上げるのは難しい。

ディバイナー 戦禍に光を求めて(字幕版)

ディバイナー 戦禍に光を求めて(字幕版)

  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: Prime Video