オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』

The Beguiled, 93min

監督:ソフィア・コッポラ 出演:ニコール・キッドマンキルスティン・ダンスト

★★★★

概要

本当は怖いハーレムラノベ

短評

『白い肌の異常な夜』のリメイクである。確かに観た記憶はあるのだが、どんな映画だっただろうか。三十郎氏のように数だけは沢山の映画を観ていても、肝心の内容を思い出せなければ意味がないという好例である。本作は“男”という異物が紛れ込んできた女の園を描いているが、オリジナル版はイーストウッドが主演なので男性視点だったはず。本作は、抑制している割には主張しまくりな演出の光る一作だった。

あらすじ

1864年バージニア州。エイミー(ウーナ・ローレンス)が、森の中で負傷した北軍の兵士を発見する。男の名はジョン・マクバーニー(コリン・ファレル)。彼女はジョンを七人の女性だけで暮らす女子学園へ連れ帰る。男──それも敵軍の兵士の登場に戸惑う学園の女たちだったが、キリスト教的慈悲の精神を発揮して、彼を匿い治療することにする。恐怖や不安、戸惑い、そして興味。女たちは様々な反応を見せる。

感想

エイミーはキノコ狩りの最中にジョンを発見する。キノコを探して男を見つける。「キノコ=男性自身」だとしか思えない。彼女が連れ帰ったのは、男という個体ではなくキノコなのである。この洒落ているのかよく分からない演出で三十郎氏の心は鷲掴みにされた。その後もそれらしい演出が軸になっている。

次に出てくるのは、亀である。エイミーが亀に餌付けしている。「亀=男性自身」だとしか思えない。最初は甲羅に閉じ込もって大人しくしていても、もてなしを受ければ調子に乗ってニョキッと本性を現す辺りがいかにもジョニー的だろう。治療を受け、匿われるジョンは、女たちに飼われている状態に他ならない。

そして、最後に出てくるのは、再びキノコである。キノコがキノコにとどめを刺す。これはジョンがジョニーを有するが故の結末だったと言えるだろう。彼が女たちに殺された物語のようでありながら、それは彼自身の性質が導く必然なのである。キノコと亀という陰茎メタファー二つで話の流れを語るという演出の妙技が大変に気に入った。これではまるで三十郎氏が陰茎に飢えているかのような解釈だが、自分にも付いているので煩わしくは思っても飢えはしない。

学園長のマーサ先生(ニコール・キッドマン)、教師のエドウィーナ(キルスティン・ダンスト)、アンニュイな年長者のアリシアエル・ファニング)、警戒心を見せるジェーン(アンガーリー・ライス)。はじめは不安がっていた彼女たちも心を開き出し、マリー(アディソン・リーケ)やエミリー(エマ・ハワード)も甲斐甲斐しい。そしてもちろん命を救ってくれたエイミー。正に楽園である。

物語のメインの流れがジョンにあるとは言え、やはりソフィア・コッポラが描いているのは彼女たちの方である。ある者はお洒落をし、ある者はそれをからかい、ある者は男の身体に反応し、ある者は抜け駆けする。彼女たちのそれぞれに「女が男を見る目」が反映されており、同時に「女が女を見る目」も描かれている。まとまるにも反発するにも静かで、腹の中が分からない生き物である。

恐らく自然光での撮影だったのだろう。全体的に画面が暗くて美女の顔がよく見えないのは残念だが、これも演出としては上手い。回復したジョンが庭仕事(剪定)をして光が射すようになると、画面が明るくなる。それは彼と女たちとの関係の改善に呼応している。しかし、それも束の間のことであり、再び関係と呼応するかのように暗くなっていくのである。映像的にも柔らかいのに冷たいという幻想的な雰囲気になっている。

リメイク版がこれだけ面白かったとなると、やはりオリジナル版も気になってくる。観たことはあるのに。Amazonさん、配信してください。

それにしても「beguile」は、「欺く」「喜ばせる」「紛らわす」「魅了する」と物凄く多様な意味を持つ単語である。

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ(字幕版)

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ(字幕版)

  • 発売日: 2018/11/09
  • メディア: Prime Video