オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グランドダディ・デイケア』

Grand-Daddy Day Care, 96min

監督:ロン・オリバー 出演:ダニー・トレホ、レノ・ウィルソン

★★

概要

ダニー・トレホが脱法老人ホームの運営を手伝う話。

短評

子供向け映画のノリを老人映画でやった一作である。“分かりやすさ”を盾にした“わざとらしさ”に満ちている。コメディアンとしてのダニー・トレホには意外性と可能性があるものの、彼は見た目の怖さがシュールな笑いを誘うのであって、狙って笑いを取りに行くとわざとらしさしか感じない。刑務所上がりの弁護士という設定は良かったが、その活かし方は良くなかった。

あらすじ

五年に及ぶスランプに悩む小説家のフランク。彼の家に不仲の義父エドワルド(ダニー・トレホ)が期限未定で転がり込んできて、筋トレBGMのポルカが邪魔で執筆が捗らない。妻の「父さんの友人を呼んで老人どうしで面倒を見させましょう」という提案に乗ってみたところ、老人たちの子から感謝され、「1日100ドル払うからこれからもお願い」と頼まれる(老人ホームなら1日300ドル)。固定資産税の支払いに悩んでいたフランクは、“シニアの交流会”と称する脱法老人ホームの拡大を目論む。

感想

ホームは脱法なので諸々の問題があり、それを弁護士のエドワルドが解決してくれるという話である。申請から認可が下りるまでに時間が掛かるので休業中の施設を買い取ろうというアイディアは良かったと思う(購入した保育園の名前がDaddy Day Care)。他はクライマックスの法廷における弁論も含めてお粗末でしかない。強面でありながらインテリという設定なのにインテリ要素が薄く、ギャップが小さいので両方とも活かされない。ダニー・トレホが刑務所上がりの弁護士という出オチに近い映画だっただろうか。彼がネットで振り込め詐欺に引っ掛かったと告白するシーンは、シリアスなはずなのにギャグになっていた。

笑いの要素はもっぱら呆ける老人頼りである。半分呆けているので会話が噛み合わず、耳の遠い男は大声を話し、痛み止めと称した飴を舐めてラリってみる。「老人を馬鹿にするな」という無駄な道徳心さえ持ち出さなければ毒にも薬にもならない笑いだと思うが、さすがにありきたりが過ぎる。そんな彼らが最後に大活躍!という展開も恐ろしいまでのありきたり。意外性がないのは結構なのだが、何も挑戦することなくテンプレに乗っかるのなら、せめて平均レベルで笑えないと悪い印象だけが残る。

五年もスランプなら“自称”小説家ではないかという気がするものの、実績があるならそうでもないか。フランクには数冊の出版実績があるようなので間違いなく小説家ではあるのだが、収入は途絶えているとのことである。アメリカの出版業界の事情は知らないが(もちろん日本のも)、重版がかからない程度の人気ということか。これは、“元”小説家が妥当かな。エドワルドが彼に言葉遣いの間違いを指摘するシーンは勉強になるが、物書きとしての能力に疑問符のつくシーンでもある。当然ご都合主義的大団円で“小説家”へと復帰するわけなのだが、この経緯がいかにも“お子様向け映画”的である。息子の恋の行方もそうだが、細部が雑すぎると思う。アニーちゃん(ジェイデン・バーテルズ)みたいな美少女が「前からあなたのことが気になってたの」なんて、ありえるわけねーだろ。