オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブラックフット』

Backcountry, 91min

監督:アダム・マクドナルド 出演:ミッシー・ペリグリム、ジェフ・ループ

★★★

概要

ある日、森の中でクマさんに出会う話。

短評

実話を基にした静かに怖い映画である。熊が出てくるまでの話は退屈でしかないが、森で迷って熊に遭遇したくないのであれば、カップルの犯した選択ミスからしっかり学んでおくべきだろう。モリミマスを祝うために森へ行く人も要注意である。熊が出てきてからも派手さはないが、それが却ってリアルで怖い。

あらすじ

週末のキャンプで森を訪れたアレックスとジェン(ミッシー・ペリグリム)のカップル。全裸水泳したり、怪しげなアイルランド人と食事を共にしたりしつつ、以前森を訪れたことのあるアレックスのガイドで森を奥へと進んでいく。遂に目的地の湖に……という所に何もない。彼らは迷ってしまったのである。彼らは喧嘩しつつも仲直りセックス未遂をし、朝起きたら真打ちの登場である。

感想

カヌーを借りる事務局で「俺は土地勘があるから地図なんて要らないよ」と断るアレックス。彼には「もしもの場合に備える」という発想がないらしい。地図くらい持っていても嵩張ることもないだろうに。ジェンに話し掛けてきたアイルランド人には無駄に対抗心を燃やし(これはアイルランド人が怪しいのも悪い)、夜中の物音に不安がるジェンを「ドングリが落ちる音だろ」と一蹴したら折れた枝が見つかって不安が拡大。彼はやることなすこと悉く裏目に出るので、反面教師としては素晴らしい事例だと思う。

アレックスに対して「どうしようもなくダメな奴だな」と呆れながら映画を観ていても、道に迷ったことが判明して「あんたは何をやってもダメね」と罵られるのは流石に気の毒である。「どうしてこんな場所に連れてきたのよ!」に対して「プロポーズしたかったから……」の気まずさと言ったらない。しかし、アレックスよ、プロポーズよりも先に友人の手伝いという職業をなんとかするべきだと思いますよ。弁護士の彼女のヒモになろうとしたってダメでしょう。もっともその後の仲直りシーンが「この窮地の間だけ仲良くしといてやるか」感が漂っていて気の毒ではあった。

熊の最初の登場シーンは、二人が寝ている間にテントをクンクンするだけ。“だけ”と言っても、これだけで既に怖い。“だけ”なのがリアルなのである。熊はパニック映画のモンスターのように執拗な襲撃を披露するわけではなく、たまたま森で見慣れないものに出会ったので「いっちょやっとくか」くらいの軽いノリである。

二度目の登場シーンではテントを引き裂いて中にいた二人に傷を負わせ、更にアレックスを引きずり出してズタズタに。彼らには為す術がない。熊は強いのである(これに勝ったディカプリオはもっと強い。特に回復力が)。アレックスの「逃げろ」の声に甘えて逃亡するジェン。本作におけるアレックス唯一の勇姿である。

その先も一応熊は出てくるものの、襲撃はここまで。「これだけで熊映画として成り立つのか?」と疑問に思うほど地味だが、「熊がいるかもしれない」という状況だけで十分にスリルがある。その鋭い爪は触れただけで皮膚を切り裂き、パンチを貰えば肉が抉れる。そんな凶悪な奴が、動物なので何を考えているのか分からなければ交渉の余地もない。襲ってきたり戻ってきたりの気まぐれ感である。二人が熊に狙われたわけではなく、不運にも遭遇してしまっただけという地味さが、実際に起こりうる状況としてリアルに怖かった。

序盤は全裸水泳時に他者の視線を仄めかしてみたり、アイルランド人が怪しかったりとサイコ・スリラーな雰囲気もあるが、こちらは最初から熊映画だと思って観ているので蛇足だったと思う。

近年で最も楽しめたTVアニメが『ゆるキャン△』なので、密かにソロキャンに憧れていたのだが、熊が怖くなったので遠慮しておこうと思う。「どうせなら人気のない場所で」と考えがちな三十郎氏は、アレックス的阿呆をやりかねない。ちなみに三十郎氏は、しまりんのお母さんが好きです。

ブラックフット(字幕版)

ブラックフット(字幕版)

  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: Prime Video