オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キョンシー』

殭屍(Rigor Mortis), 101min

監督:ジュノ・マック 出演:チン・シュウホウ、アンソニー・チェン

★★★

概要

キョンシー・マンション。

短評

2013年に公開されたコメディ要素のない異色のキョンシー映画。本作のキョンシーには一切の愛嬌がなく、真っ当に怖い怪物である。特殊メイクもCGも洗練されている。怖いのにお馴染みの“前へ倣え”ポーズをするシーンにはクスリとさせられるものの、ホラー・コメディ以外にキョンシーの活躍の場があるという事実が新鮮だった。英題の『Rigor Mortis』は死後硬直という意味。

あらすじ

妻子と離れた俳優(チン・シュウホウ。『霊幻道士』のセン役で役名は本名まま)が越してきた(人が住んでいるのに見た目が)廃墟同然のマンション。彼の新居には血生臭い過去があり、そこに取り憑いた双子の幽霊を二人の道士が封印するのが第一幕。しかし、道士には良い奴と悪い奴がいて、悪い方がマンションで死んだ男をキョンシーとして復活させるのが第二幕。良い方と俳優がキョンシーに立ち向かう話である。

感想

スタイリッシュなホラー映画である。双子の幽霊の周りをウヨウヨしている血液なのか何なのかよく分からない物体が寄生虫のようで、非常に気持ち悪くて格好いい。映画の前半は俳優と彼女たちの物語であるため、「キョンシー関係ないじゃん」とキョンシー映画への期待が裏切られるものの、ちゃんと後半のキョンシー・パートへ繋がる設定が用意されている。三十郎氏はキョンシーに詳しいわけではないし、これまでのキョンシー映画をどの程度踏襲しているのかも分からないが、話が繋がってはいてもキョンシー的に必要な設定だったのかは怪しいと思う(幽霊を出すこと自体が『霊幻道士』へのオマージュだったのか)。

陰鬱な雰囲気や見た目の怖いキョンシーキョンシー映画らしくない。しかし、本作にもキョンシー映画らしいところがある。カンフーである。道士はやはりカンフーの使い手だし、俳優も演技のために修得したのであろう。幽霊が相手であろうとキョンシーが相手であろうと、戦いの手段はカンフーに限られる。なお、道士はカンフーの他に書道にも通じており、こちらもキョンシー退治には必須のスキルとなっている。クライマックスはカンフーと霊能力の合わせ技で、綺麗なのか汚いのか分からない幻想的なバトルが繰り広げられていた。

ラストは夢オチということでよいのだろうか。キョンシー俳優は死ぬ前にキョンシーの夢を見るか。しかし、俳優が首を吊ったのは引っ越し初日であるため、彼の妄想にマンションの住人が総登場するのは理屈に合わないような気もする。それ故に職業設定が滅茶苦茶になってはいるが、なんらかの改変があったか、別の世界線への移動のような可能性も残るのだろうか。死の間際に出会った人を走馬灯化するよりも、ちゃんと妻子と向き合わないのは何故だろう。いずれにせよ死んでしまっては関係ないけれど。

グロ描写の多い映画である。そもそもキョンシーのビジュアルが、らしくないグロテスクさである。カラスの血を用いたキョンシー復活のための儀式やバトル中の串刺し、そして極めつけは道士の腕がねじ切れるシーン。この辺りは非常に楽しめた。

チン・シュウホウ以外に二人の道士、更にはキョンシー役やちょい役のおっさんに至るまで『霊幻道士』シリーズの出演者とのことである。三十郎氏は「セン役の人は言われてみれば面影が……」レベルなのだが、シリーズのファンには嬉しい同窓会かもしれない。もっとも映画は真逆の方向性なので、ファンはこれをキョンシー映画として素直に受け容れられるのだろうか。

キョンシー(字幕版)

キョンシー(字幕版)

  • 発売日: 2015/02/04
  • メディア: Prime Video