オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『すばらしき映画音楽たち』

Score: A Film Music Documentary, 92min

監督:マット・シュレーダー 出演:ハンス・ジマートーマス・ニューマン

★★★★

概要

映画音楽の役割と歴史、そして制作。

短評

皆一度ならず耳にしたことがあり、音楽を聞くだけで映画の場面を思い出せるような名曲たちに彩られたドキュメンタリー映画。名曲が流れるシーンではその度に鳥肌が立つ。レコーディングにのシーンでは無意識に指揮者の真似をしてしまうことだろう。音楽の力は凄い。映画好きであれば幸せな時間を過ごせること間違いなしの一作である。

感想

映画に台詞が登場する以前から音楽は映画に欠かせない要素だった。映写機の音を誤魔化すために劇場で演奏されたオルガンから始まった映画音楽は、『キング・コング』でオーケストラが導入され、『欲望という名の電車』でジャズを、そして70年代後半にオーケストラから解放されて、電子音楽やポップ・ミュージックのように様々な音楽が使用されるようになって現在に至る。ダニー・エルフマンが語っているように、映画音楽は「There's one rule.There are no rules」なのである。この自由さこそが映画音楽の特徴と言えるだろう。

映画史を彩る歴史の中でも、やはり圧倒的存在はジョン・ウィリアムズである。映画史全体を見ても彼は頂点と呼ぶべき存在だし、三十郎氏の世代にとっては彼の音楽こそが映画音楽という気さえする。『E.T.』のテーマ曲について「“この曲を覚えて帰って”って言ってるみたい」と語っている作曲家がいたが(他にも「映画音楽は感情の潤滑剤」といった的を射た表現が多い)、正にその通りである。ジョン・ウィリアムズ以上に耳に残る、そして映画を印象づける曲を量産した作曲家はいないだろう。『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』が彼の音楽無しなら、全く別の映画になっていたに違いない。

音楽が画面内の視線誘導の一翼を担っているという話は面白かった。三十郎氏は、動きや被写界深度、色彩によって視線誘導されているものだと思っていたのだが、画面内の動きと音楽を合わせることにも視線誘導の効果があるのだとか。映画が演技や映像だけで成立するものではない、総合芸術としての性格がよく分かるエピソードである。

三十郎氏は、“ゼロ年代の一作”を『グラディエーター』だと考えている。作品単体としての出来に加えて、その後の映画界に与えた影響を鑑みれば、ゼロ年代を代表する一作と言って差し支えないだろう。映画音楽の世界においても『グラディエーター』以降は“ハンス・ジマーの時代”とされているのは興味深かった。

名前は知っていても顔は見たことがない作曲家たちの顔を見られるのも本作の魅力である。『ワイルド・スピード』シリーズのブライアン・タイラーはイケイケの兄ちゃんだった。彼が観客の反応を確かめるために映画館へ足を運び、スクリーンの脇から客席を覗き込む様子は微笑ましい。目が合ってしまった観客は不気味な思いをしただろうけど。

作曲家たちも凄いが演奏家たちも凄い。大半のスタジオ・ミュージシャンたちは楽譜を初見で演奏・収録しているのだとか。化け物かよ。

すばらしき映画音楽たち(字幕版)

すばらしき映画音楽たち(字幕版)

  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: Prime Video