オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『スターシップ9』

Órbita 9(Orbiter 9)94min

監督:アテム・クライチェ 出演:クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス

★★

概要

宇宙船で生まれ育った女が実は地球にいた話。

短評

宇宙船を舞台にしたSFだと思ったらそうじゃなかったという転換点までは面白かったが、その後の話の転がり方はいまいちだった。ロマンスを主題としているなら、それは男の方に少々都合が良すぎる気がする。スリラーとしても弱いし、SFじゃないけどSF的なテーマの掘り下げも浅い。もっとも宇宙の話じゃなかった時点で、三十郎氏にっとてはクララ・ラゴが綺麗だという以外は期待はずれなのである。

あらすじ

惑星セレステを目指す宇宙船で一人筋トレに励むエレナ(クララ・ラゴ)。彼女の両親は「酸素が一人分しかないから先に死ぬわ。一人で頑張れ」とメッセージビデオを残して既に旅立ってしまった。孤独な彼女の元にエンジニアのアレックス(アレックス・ゴンザレス)が酸素系統の設備修理に現れる。エレナは「船で生まれ育ってキスもしたことがない。これから先の20年も孤独なの。お願い……」とアレックスに迫り、二人は交わる。修理を終えてアレックスは船を去るが、彼の行き先は自分の宇宙船ではなく地球なのである。

感想

「惑星間航行中にエンジニアが修理に駆けつけてくれるような環境なら無理して一人しかいない船に残る必要がないのでは?」「惑星移住を目指すなら人も沢山いるだろう」「酸素が足りない割には生活スペースの広さが贅沢過ぎるのでは?」といった序盤の違和感が、船を去ったアレックスが歩いている工場の通路みたいなロケーションを見てマックスになる。

続いて現れるのは、どう見ても地球である。「え?どういうこと?」と困惑するが、エレナは最初から宇宙になんておらず、隔離施設で宇宙旅行中の人間の影響を調べる被験体なのである。言われてみれば納得。これで序盤の違和感も回収される。エレナが状況のおかしさに気付かないのは、宇宙船で生まれ育ったために情報が制限されていたからということでよいだろう。

さて、アレックス。船を離れてもエレナのことが頭から離れない。一戦交えれば情が湧くのが男という生き物である。相手が美女であれば尚更だろう。彼は(人道面の葛藤を少しだけアピールしつつ)「エレナを連れ出さねばならん」と決心するのだが、詰まる所ジョニーに抗えなかっただけである。それは、エレナに「なぜ私だけ外に?」と尋ねられると答えに窮し、無言で彼女の頬を撫でるシーンが証明している。

そんな二人が恋に落ち、交わり……という展開は、アレックスに都合が良すぎる。だってエレナはアレックス以外の男を知らないのだから。船で迫ったのは孤独に負けたからであり、アレックスという人間に惹かれたわけではない。それにアレックスだってクララが美人だから暴走しただけで、両者ともにお互いを一人の人間として愛するに至るような過程はどこにもない。それを愛の物語として決着させるのはいかがなものだろう。演じている俳優が男前だから許されているが、仮に三十郎氏のような醜男が同じ行動をすれば悪質な洗脳だと叩かれるに違いない。

アレックスのセラピーを担当している精神科医ベレン・ルエダ)が、Vtuberのようなシステムを採用していた。動作や表情を読み取ってキャラクター(狼)に反映させるものである。三十郎氏はVtuberについて名称くらいしか知らないのだが(一瞬システムが落ちて美少女キャラの中のおっさんが出てきたgif動画は見たことがある)、恐らくこんな感じで動かしているのではないだろうか。声はどうしているのだろう。それはそれとして、顔の見えない相手に相談するのは、キリスト教圏だと懺悔システムのおかげで違和感がないのだろうが、三十郎氏からするとビッグ・ブラザー的でディストピアっぽかった。

スターシップ9

スターシップ9

  • メディア: Prime Video