オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『氷の微笑』

Basic Instinct, 128min

監督:ポール・バーホーベン 出演:シャロン・ストーンマイケル・ダグラス

★★★

概要

殺人事件の容疑者は思わせぶりなセクシー美女。

短評

エロサスというジャンルは、そもそも本編がつまらないからエロで釣っているのではないか。もしそうであれば、エロサスが面白くなることは原理的にありえないのではないか。そんな疑問が三十郎氏の頭をもたげたが、世の中には(界隈で)名作扱いされているエロサスも存在することを思い出した。本作は、ミステリー的な筋書きでありながら事件の真相よりも美女のことばかりが気になり、脚の組み替えシーンがドキドキハラハラな紛れもないエロサスである。本能を刺激する面白さだった。

あらすじ

元ロックスターのバズが性交中にアイスピックでめった刺しにされて殺害された(彼は逝く前にイッたそうである)。容疑者は、彼と関係を持っていたキャサリン・トラメル(シャロン・ストーン)。彼女は心理学の専門家であり、なんと事件とほぼ同じ内容の小説を書いた小説家でもある。そして、絶世の美女である。事件の捜査を担当するニック・カラン(マイケル・ダグラス)は、この危険な女に惹かれていく。

感想

桃色である。ブロンド美女の激しいセックスシーンから始まる映画が桃色以外であるはずがない。最初からエンジン全開である。乳も尻もプリプリである。その後も伝説となった脚の組み替えを筆頭に、ニックとのセックスや女性とのキスシーン、他にもニックがベス(ジーン・トリプルホーン)と暴力的に交わるシーンで男性の本能を刺激し続ける。天井に鏡のある部屋なんてラブホテルみたいで桃色マックスである。

ニックも観客もキャシーが“ヤバい”女であることは本能的に理解できる。しかし、こちらの本能は頭部に搭載された脳と呼ばれる軟弱な部位が司るものである。男性諸氏ならば皆ご存知であるかと思うが、我々の身体にはもう一つ本能を司る部位が備わっており、それは股間に二つ間抜けな姿でぶら下がっている。こちらの本能はジョニーと呼称され、脳のそれよりも強力である。文明人たる脳が何と言おうと、暴れん坊将軍のジョニーには抗えない。インテリは暴力に屈する宿命にある。

B級サスペンス映画にありがちな“無意味な匂わせエンド”に慣れてしまうと、本作のラストもそうなのではないかと思ってしまったりもするのだが、バーホーベンの特殊な女性観を知っていれば真犯人はキャサリン以外にありえないだろう。全てを意のままに操る女こそが彼女の正体であり、その武器が性なのである。知力や腕力を武器として駆使するのと何も違いはないのである。きっとバーホーベン的には彼女は悪女ではないはず。彼女の計算高さは一種の強さとして描かれているのだと思う。フェミニスト等の既存の文脈とは全く別の形で価値観多様性の先端を行く人である。

本作はキャサリンという強い女が、自分の強さを実践してみせる物語なのだろう。男の(そして女の)ジョニーを知り尽くした彼女が、それを利用して自分の思い描いた物語を現実のものにする。凡人である三十郎氏には動機を理解し難いが、虚構を現実化することで完成する一種の芸術なのだと勝手に思うことにした。男性諸氏は「怖い女に騙されないように気をつけよう」などと考える必要はない。キャサリンの如き美女の手掛けるアートの一部になれるなんて身に余る栄誉ではないか。

本作は至上最も一時停止された映画であるという。27分57秒のシーンである。当然三十郎氏も一時停止した。(『ジュラシック・パーク』の糞デブ役でお馴染みの)ウェイン・ナイトと全く同じ表情になった。プライムビデオで配信されているバージョンでもHDリマスターの恩恵を受けられる。

氷の微笑 (字幕版)

氷の微笑 (字幕版)

  • メディア: Prime Video