オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・デッド:インディア』

The Dead 2: India, 97min

監督:フォード兄弟(ハワード・J、ジョナサン) 出演:ジョセフ・ミルソン、ミーヌ・ミシュラ

★★

概要

インドでゾンビから逃げつつ身重の恋人の元を目指す話。

短評

ゾンビ映画は大きく二種類に分けられる。ゾンビを恐怖の対象として描くホラー映画と、ゾンビを狩りの対象として描くコメディ映画である。本作は前者に該当する。(主人公が普通に歩くだけでも追いつけないほど)ゆっくりとした動きを見せるゾンビは、アスリート的ゾンビが幅を利かせている今となっては逆に新鮮である。かなり硬派なゾンビ映画なのだが、序盤と終盤以外はゾンビの出番が少なすぎるロード・ムービーになっているため、退屈さは否めなかった。

あらすじ

インドで風車を修理中のアメリカ人ニコラスに、恋人イシャニから電話が掛かってくる。イシャニはニコラスに「妊娠したの」と告げるが、同時に街の様子が可怪しいと不安がる。ニコラスが周囲を見渡すと、人が人を食っている(ゾンビの広がりに対して人々の対応の遅さは何なのか)。彼は「家から出るな」とイシャニに告げ、彼女が待つムンバイを目指す。

感想

インドの人口が多いことはよく知られている。特に都市部では無限に人が湧いてくるのではないかと思うような多さである。どこを見ても人がいる。店には「そんなに店員要らないだろ」と思う数の店員がいて、通りには何をしているのか分からない人たちが昼夜を問わずたむろしている。逃げても逃げても声を掛けてくるニューデリー駅付近の客引きたち、「バクシーシ」とせがむ乞食たち、彼らは正にゾンビ的である。

そんなわけで火葬文化を持ちながらもインドとゾンビ映画の相性はとても良いのではないかと思う。本作の序盤も、草原にポツポツと立っている風車にいるニコラスのところに、どこにそんなに人がいたのかという数のゾンビがやって来る。この“湧いて出る”感が、とてもインドなのである。

しかし、ニコラスがモーターパラグライダーでの脱出を決めた後はめっきり出番が減ってしまう。途中で救助した少年とのロード・ムービーがメインとなっており、そこで描かれるドラマは決して濃くない。事故を起こした車に挟まって動けなくなった母娘がゾンビに襲われる前に殺したようなエピソードを、もっと挿入してもよかったのではないかと思う。もっともそれによる心の動きが描かれなければ無意味なのだが。

イシャニの父親が、折角ロックした扉を何度も開けては隙間から外の様子を窺っている。そして、その度にゾンビに押し入られそうになっている。この家には窓がないのだろうか。ムンバイの方のゾンビはこの隙間から覗く描写がメインになっており、人口の多さという最大の武器が活かされていないのは残念だった。

ゾンビの特殊メイクはよく出来ていた。黒目が小さくなっているのも怖くて良い。人間の肉を食いちぎる描写も生々しい。個別のクオリティを上げた結果、全体として数を減らさざるをえなかったのだろうか。

原題に「2」という数字がついていることからも分かるように、本作は『The Dead』という映画の続編である。邦題は『ゾンビ大陸 アフリカン』。バカ映画っぽいタイトルだが、本作と同様に硬派なゾンビ映画なのかもしれない。出演者は共通していないようだし、前作との繋がりを匂わせる描写もなかったので、話自体は独立していると思われる。

ハンマーで殴り殺すことには躊躇いがなかったのに(抉れた頭の描写もグッド)、銃を使うのに戸惑いを見せるニコラスの心中は、どういう理屈なのだろう。

ヒンドゥー教的にはゾンビも輪廻の一形態ということになるらしい。

ザ・デッド:インディア(字幕版)

ザ・デッド:インディア(字幕版)

  • 発売日: 2015/12/09
  • メディア: Prime Video