オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』

Sicario: Day of the Soldado, 122min

監督:ステファノ・ソリマ 出演:ベニチオ・デル・トロジョシュ・ブローリン

★★★

概要

CIAがメキシコ裏社会でクーデターを起こそうとする話。

短評

流石に前作ほどは痺れないが、それでも緊迫感溢れるアクション映画である。無駄な動きの一切なかった必殺仕事人アレハンドロが無駄撃ちしたりと派手さが裏目に出た部分もあるが、彼らのキャラクターの掘り下げは面白かった。驚愕すべき国境の現実を突き付けて観客の正義を揺さぶるような前作から、スケールを広げて次に何が起きるのかとワクワクするような話に仕上がっていたと思う。

あらすじ

アッラー・アクバル」と唱えながら自爆する密入国者。カンザスのスーパーで自爆するテロリスト。そして、マット(ジョシュ・ブローリン)は何故かソマリアへ。「カルテルの話はどうなった?」と思いきや、テロリストがイエメンから海路でメキシコに向かい(金を貰った海賊がその船を見逃す)、そこから密入国するのにカルテルの手を借りるという仕組みらしい。今やコカインよりも人間の方が金になるのである。この状況を打開すべく、マットはカルテルどうしで戦争させる作戦を開始する。

感想

前作ではケイトの視点を通して現実の認識や正義感を揺さぶられたが、本作はやりたい放題するアメリカに翻弄される人々の姿が描かれていたように思う。マットもアレハンドロもカルテルも、現場の“遥か上”たるアメリカ政府の都合に振り回されているに過ぎない。それが極まるのは自爆テロの犯人がアメリカ市民だったと判明した後の展開で、頼もしいはずのマットの行動には正当性がなく、彼すらもケイトと同じ駒に過ぎなかったことが分かる。

サーマルスコープや暗視スコープ、そして空撮を利用した演出が前作から引き継がれていた。撮影監督がロジャー・ディーキンスからダリウス・ウォルスキーにバトンタッチしているが、映像面では大きな方向性の変化はなかったように思う。ただ、全体的に彩度が上がっていて、前作のように乾ききった雰囲気は感じられるシーンは少なかった。市中でのシーンが増えたからだろうか。

冒頭の爆発は前作からの繰り返しなのだが、二度の爆発が両方とも唐突感に欠けていたのは残念だった。一度目は荷物を探って「アッラー・アクバル」なので爆発するに決まっているし、ニ度目は一度目の直後なので驚きはない。二つとも「ここで爆発するぞ」というタイミングでの爆発である。お姫様護送中のRPG襲撃も緊迫感はあるのだが、来るのか来ないのか不安な状態はもっと引き伸ばしてもよかったと思う。

他の繰り返し要素としてサイドストーリー(前作では警察官)の人物が終盤に本筋と絡んでくるものがある。こちらは「こいつもろくなことにならないんだろうな……」と思いながら観ていたので意外だった。この辺りは脚本がテイラー・シェリダンのままなのが上手く活きたか。

「主人公だと思っていたケイトが実はただの道具だった」前作からケイトにご退場いただいて、真のおっさん映画が始まるかと思ったらまさかの展開で、更にまさかの展開だった。アレハンドロは不死身かよ。前作のように「実はヤバい奴だった」的な驚きがないので、「なんだかんだでこいつは生き残るだろう」という予測が一度目の“まさか”を強調し、二度目の“まさか”は笑いに近い。

カルテルのお姫様イザベルちゃん(イザベラ・モナー)。同級生を殴りつける勇ましさは頼もしいが、カルテルのボスの娘として敵も味方も悪い奴には皆顔を知られているというのは気の毒である。このシリーズに登場する重要な女性キャラはだいたい気の毒である。

続編を意識した終わり方なので三部作になると思われる。アレハンドロとシカリオ見習いの相棒を得てCIAと戦うのだろうか。ラストの「シカリオになりたいのか?」だが、いくらミゲル少年の肝が座っているとは言え、あの状況で「いや、僕はギャング稼業の方が……」とは答えられないだろう。

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(字幕版)

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(字幕版)

  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: Prime Video