オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ブルー・リベンジ』

Blue Ruin, 90min

監督:ジェレミー・ソルニエ 出演:メイコン・ブレア、デヴィン・ラトレイ

★★★

概要

復讐した男が復讐されて復讐する話。

短評

ピリピリとした緊迫感や凄惨な暴力描写に騙されそうになるが、ジェレミー・ソルニエなる監督の本質はブラック・コメディなのではないかという気がしてきた。考えてみれば、作家性が最も出やすいデビュー作の『マーダー・パーティー』なんてほぼコメディである。ガーデンフォークが登場した時には「どういう使い方をするのだろう?」とワクワクするし、デブで薄ら禿の銃オタク、どう見てもダメな奴のベンが救世主的に登場するシーンなんて大爆笑である。

あらすじ

留守宅に侵入して風呂に入り(ホームレスなのに清潔好き!)、遊園地の残飯を漁り、錆びついた車で生活しているヒゲモジャのホームレス、ドワイト(メイコン・ブレア)。これが本作の主人公である。ある日、彼の車に警察官がやって来て「彼が釈放された」と告げる。“彼”とは、ドワイトの両親を殺した男なのである。

感想

物音に気付くとバスタオル片手に脱出する冒頭から笑える。釈放された仇のウェイドを首尾よく(首とこめかみにナイフで一撃ずつ加えて)殺害するのも、「首尾よく」と言ってよいのか分からない程度にはもたついている。ドワイトは復讐の鬼と見せかけて、割と抜けていると言うか弱々しい男なのである。

彼の弱さにはリアリティがあるのだが、恐らくは犯人が釈放された時に備えて世捨て人的な生活を送っていただろうに「今まで何やってたんだ」感が拭えない。あの至近距離で射撃を外すってどういうことだよ。練習しとけよ。彼はツッコミどころの多い男なのである。

「復讐は何も生まない」という空虚な結末も、本作がブラック・コメディであると考えれば皮肉が効いている。復讐という非生産的な行為は、確かに阿呆な行為なのである。ドワイトの姉サム(エイミー・ハーグリーブス)は彼に告げる「あなたがバカなら許せるけど、あなたは弱いだけ」。ドワイトは復讐に意味がないことを理解している。自分でも終わらせたいと考えている。それでもやめられない。従って破滅的な結末以外にはありえない。それを分かっていながらやっちゃうのは、やはり阿呆なのである。

ドワイトは阿呆なのだが、復讐の対象であり、彼と姉を狙うウェイド一家も阿呆である。雰囲気はピリピリとしているのに、阿呆どうしでグダグダやっている辺りが最高にブラック・コメディ感がある。

救世主ベン(デヴィン・ラトレイ)が半分を吹き飛ばす顔も好きだが、一番好きなのはボウガンで脚を射たれたドワイトが、自分で治療しようと挑戦するも諦めて病院に駆け込むシーン。自分では無理なことをやろうとして、結局できずにぶっ倒れるという阿呆ぶりが笑えるのである。笑えるけれど、矢の刺さった傷の描写は生々しく痛々しい。

ブルー・リベンジ(字幕版)

ブルー・リベンジ(字幕版)

  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: Prime Video