オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アルカディア』

The Endless, 111min

監督:ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド 出演:ジャスティン・ベンソン、アーロン・ムーアヘッド

★★★

概要

カルトのコミューンでカルト的な現象が発生する話。

短評

怖がらせることなく不気味な思いをさせるホラー映画である。最初はカルトに乗り込むモキュメンタリー的なノリなのかと思ったら、徐々にカルト宗教という言葉だけでは片付けられないオカルト的な展開になっていく。現実の延長上にある不穏な世界の描き方が面白かった。

あらすじ

カルト団体のコミューン“アルカディア”から脱出したジャスティン(ジャスティン・ベンソン)とアーロン(アーロンムーアヘッド)の兄弟。ある日、兄弟の元に団体のアナ(キャリー・ヘルナンデス)の映ったメッセージ・ビデオが届き、アーロンが「帰ってみたい」と言い出す。「一日だけだぞ」とアルカディアを訪ねると、兄弟は不思議な現象に遭遇し、「あと一日だけ」「もう一日」と滞在を延ばしていく。なお、アナは「ビデオなんて知らない」と言う。 

感想

実質的に『キャビン・イン・ザ・ウッズ』の続編である。前作の登場人物たちが登場した時には「うわぁああああ!!!」となった。たまらず前作を確認してみると、冒頭に登場するマイクの妻が、本作で「夫を探しに来た」と言う女性ジェニファー(エミリー・モンタギュー)である。て言うか、ジャスティンもアーロンも出てくる。本作に引用されているシーンもある。フランス人の言葉も何となく分かってくるし、色々と繋がる、これはさながらベンソン&ムーアヘッド・ユニヴァースではないか。前作の奇妙な出来事はここに繋がっていたのか。

と言っても、“何か”が存在するという事実やシステムの一端が明かされるだけで、全容が明かされるわけでない。謎は謎のまま。我々に理解できるのは、あくまで目で見ることのできる現象だけである。映画の冒頭に「恐怖は未知の云々」というラヴクラフトの言葉が引用されているのだが、この「謎のシステムのまわりをウロウロする」というスタイルは全てラヴクラフトの影響であるらしい。『森見登美彦をつくった100作』にも『インスマウスの影』が入っている。いつか挑戦したい作家リストの筆頭なのだが、「読みづらい」という評判が先立って億劫である。

本作はホラーなのかファンタジーなのか曖昧である。邪神的な存在が引き起こす謎現象はホラー的だが、それを望み、受け入れている人がいるのなら、彼らにとっては恐怖の対象ではない。兄弟は「逃げる」という選択をするが、弟の「帰ってクソみたいな生活をするよりもここでの暮らしを続ける方がいい」という意見にも説得力がある。“それ”を受け入れた信者たちも同じ気持ちなのだろう。

もっとも“それ”は本人の意志とは関係なく影響下にある人間を飲み込んでしまう。短時間ループに囚われたおっさんは可哀想。カルトの人たちだって最初は良くてもいずれ嫌にならないのだろうか。しかし、嫌になっても受け入れるより他に選択肢がない。諦めて“生きる”しかない。考えてみれば、日常生活の繰り返しにも似たところがある気がする。“死”が担保されているのか否かにより、既存の価値観は根底から覆る。死は救いなのである。

アルカディア(字幕版)

アルカディア(字幕版)

  • 発売日: 2018/11/02
  • メディア: Prime Video