オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・リトル・ストレンジャー』

The Little Stranger, 101min

監督:レニー・アブラハムソン 出演:ドーナル・グリーソン、ルース・ウィルソン

★★★

概要

かつて栄華を誇ったエアーズ家の館が廃れる話。

短評

よく分からなくてスッキリしないし、特別に怖いシーンもないのだけど、なんとなくゾワっと来る映画である。果たしてラストのアレは、そういうことだと素直に受け取ってよいのか。劇中に出てくる言葉の意味がタイミングにより変化して「そういうことだったのか」と思いかけるも、それだけで納得してよいものなのか。色々と割り切れない一作である。原作はサラ・ウォーターズの『エアーズ家の没落』。

あらすじ

医師のファラデー(ドーナル・グリーソン)が往診にやって来たエアーズ家の邸宅はかつて栄華を誇っていたが、それも今は昔、すっかり荒廃していた。館に住んでいるのは、エアーズ夫人(シャーロット・ランプリング)、ロデリック(ウィル・ポールター。この人イギリス人だったのか)、キャロライン(ルース・ウィルソン)、そしてメイドのベティ(リヴ・ヒル)の四人である。ファラデーはエアーズ家と仲を深めるが、一家には不幸な出来事が続く。

感想

これはブログのカテゴリーでジャンル分けを始めたという個人的な事情でしかないのだが(なんとか昨年中に完了したが、辛い作業だった。現在は確認作業中である)、ホラーなのかミステリーなのか大変に迷う映画である。ホラーと言うほど“怖い”わけではないし、ミステリーと言うほどスッキリと“謎が解ける”わけでもない。

“怖さ”という点で言うと、本作はほぼ全編が非常に静謐に進行しながらも、いわゆるホラー的な演出が少しあり、そこに“謎解き”についての引っ掛かりを覚える。

映画のラスト、誰もいなくなった館を三階から見下ろしているのは少年時代のファラデーである。彼は少年時代に館を訪れたことがあり、回想パートではその時の憧れを懐かしげに語っている。最後にその時の言葉が繰り返されて、「これはファラデーが館を手に入れる話だったのか……」と一度は納得する。しかし、問題となるのは上述のホラー的な演出である。

演出というよりも出来事と言った方がいいだろう。あれをエアーズ夫人の幻覚で片付けることも可能だが、意味ありげに語られながら全容の明かされない、幼くして死んだ少女スーザン、「家に何かがいる」と精神を病んだロデリック(これはPTSDで説明可能か)、パーティーで少女を急に襲った犬といった要素が不気味に引っ掛かり、“何か”の存在を感じずにはいられない。

また、キャロラインの死については実行可能なのがベティだけということもあり、ファラデー単独の物語と断ずることはできない。彼らは二人とも“The Little Stranger”なのか。

生き残った犯人が「俺がこうやった」という回想映像でもあればスッキリするのだろうが、それでは全然面白くなくなってしまうの。そもそも犯人と呼べる人間なんているのかどうか。ゴシック・ホラー的な雰囲気以外に、このモヤモヤを楽しむ映画だったと言ってよいかもしれない。人間の怖さと霊的な怖さの両方が、どっちと言うこともできず不穏である。結局は“館”の物語であり、時代の流れによる館の荒廃に伴って人はいなくなる宿命だったのだろうか。

 

*追記 犯人が知りたくてこのページを訪れた方へ

私も犯人が分かりません。何か気付かれたことや面白い考察があれば是非教えてください。

エアーズ家の没落 上 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落 上 (創元推理文庫)

 
エアーズ家の没落 下 (創元推理文庫)

エアーズ家の没落 下 (創元推理文庫)