オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ビューティフル・デイ』

You Were Never Really Here, 89min

監督:リン・ラムジー 出演:ホアキン・フェニックス、エカテリーナ・サムソノフ

★★★

概要

ロリコンが殺される話。

短評

終わってみればとてもシンプルな筋書きだったのに、説明過少かつ意味深な映像の挿入によりとても難解な話だったかのように感じる。ラスト一歩手前のズドンには呆気にとられ、「え?え?なんなの?」と大混乱した。しかしエンドロールを眺めながらどういうことだったのか考えていると、シンプルな話だったような気もしてくる。しかし、やっぱり分からない。不思議な映画である。

あらすじ

ヒゲモジャのおっさんジョー(ホアキン・フェニックス)が小さなハンマー片手にしている裏稼業的なお仕事の内容は、どうやら(その過程でハンマーを使用するタイプの)家出少女の奪還であるらしい。上院議員から家出娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)の奪還を依頼され、現場へ向かうとそこはロリコン専用の売春宿。ジョーは警備をなぎ倒してニーナを奪還し、ホテルの一室で議員を待っていると、議員の飛び降り自殺のニュースが流れる。更に、ホテルに現れた警察にニーナを連れ去られてしまう。

感想

シリアスかつ難解な雰囲気をまとっているが、やっている事自体は“最強のおっさん”映画的な話である。太っているし(ここからアーサーまでよく体重を落としたものである)、世捨て人みたいな格好をしているけれど、ジョーはめちゃくちゃ強い。必殺仕事人が少女を助ける。これだけならば普通の“最強のおっさん”映画なのだが、本作ではアクションが描かれないし、またジョーは大変に鬱屈しているのである。

ジョーは何も説明してくれないのだが、メインのプロットが進行する合間に挿入される映像はジョーの過去のトラウマである(ハンマーは父による虐待&DVに用いられていたのか)。ビニール袋を用いた窒息プレイも自慰行為ではなく希死念慮に基づくものらしい。そんな彼が生気を失った少女ニーナに出会って悪党(ロリコン)に立ち向かう。ここまでならば『タクシードライバー』のような話だと解することができるが、問題は家出少女のニーナちゃん。

ジョーが黒幕の館に乗り込むと、黒幕は首を切られて既に死んでいる。ニーナちゃんはどうなっているかと言うと、首を切ったカミソリを傍らに置いて食事をしている。ジョーなんていなくても彼女は助かるのである。あんた、何者なんだよ。終わってみれば、何が現実で何が妄想だったのか分からないし、「一体何だったのだろう?」感はあるが、「It's a beautiful day.」と言われると「……そうだね」と納得するより他にない。仮に全てが妄想だったとして(『サイコ』が出てくるのはそういうことか)、あれはあれで妄想を完結することによりジョーは救われたことになるのだろうか。

流石に説明過少だと思う。もう少し分かりやすければもっと響く映画になっていたかもしれないのに。こういう「監督自身にとっての完成度が最優先」みたいな映画は、観客に何かを伝えるよりも自分の内にあるものを吐き出すような行為だと思うので、無理に理解する必要もないのだろう。

水葬のシーンが印象的である。

サントラがレフンの映画みたいだと思って調べてみたら、ジョニー・グリーンウッドだった。言われてみればレディオヘッドみたいなところもある。レフン映画の常連クリフ・マルティネスもまたロック出身の人である。

鬱屈したこどおじをホアキン・フェニックスが演じており、更には妄想の要素まであるとなれば、『ジョーカー』のファンにとっては必見の一作と言ってもよいだろう。ただし、こちらにはヒーロー映画的な親切さはないのでご注意を。

ビューティフル・デイ(字幕版)

ビューティフル・デイ(字幕版)

  • 発売日: 2018/12/04
  • メディア: Prime Video