オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ビニー/信じる男』

Bleed for This, 116min

監督:ベン・ヤンガー 出演:マイルズ・テラーアーロン・エッカート

★★★

概要

事故で首の骨を折ったボクサーが復帰する話。

短評

アスリートが挫折から立ち直る映画は数多あれど、本作はイカれた実話である。二時間近くある割には駆け足感のある進行なのだが、それが却って「いやいや、本当に大丈夫なの?」感を引き立てている。「ボクサーってやつは理解不能な生き物だな」と思う一方で、最後にビニーが語る「勝てばいいんだ」には大いに納得させられる。

あらすじ

時間、重量、陰部の露出と色々ギリギリな状態で計量をパスして臨んだタイトル戦に敗れたビニー・パジェンサ(マイルズ・テラー)。トレーナー(アーロン・エッカート)の勧めにより二階級アップして臨む復帰戦は、踏み台として利用されるだけのタイトル戦のはずだったが、見事に勝利を収めてベルトを獲得する。彼は「シリアルの外箱に載る気分」で人生の絶頂にあったが、交通事故に遭って首の骨を折ってしまう。

感想

「よくやるよ……」というのが、正直な感想である。医者の「歩けなくなるかも」との心配をよそに本人は事故直後から復帰する気満々で、首を固定する器具をつけたまま筋トレを再開する姿には思わず笑ってしまった。ビニーもビニーならトレーナーもトレーナーで、「危ない。無理」と言いながらも、地下室で男二人のヒミツの特訓を開始しちゃう辺りが微笑ましい。とても正気とは思えないが、それがボクサーという生き物であり、無謀であるが故に復帰を果たしたのだろう。

栄光→挫折→栄光と落差の大きな物語の割には起伏に乏しく感じる。物語が駆け足でエピソードを順に消化した感があるからだろうか。挫折から再起の部分はもう少し絶望的に描いてもよかったと思うのだが、ビニーがタフすぎて驚くほど順調に進んでしまう。復帰戦として描かれているデュラン戦の前に別のタイトル戦でKO勝利を飾っているようなので、どうしてドラマチックな結末にできるそちらをメインにしなかったのか疑問である。相手選手の知名度の問題なのか。IBOとIBCでは団体の格が大きく異なるのだろうか。

やたらと家族の存在感が大きい辺りがいかにもイタリア系である。ビニーの試合の時には一族の女が集合し、皆でテレビの前に並んでいる。その中で彼の母親だけが試合を見ていられず、神に祈っているのも“らしい”ところである。

アーロン・エッカートが不自然なまでに禿げ上がっているのでモデルに寄せたのだろうと思ったら、やはりエンドロールに登場する本人は見事に禿げ上がっていた。彼の頭部の仕上がりと同じく、マイルズ・テラーの身体の仕上がりはもう一歩というところか。ビニーのプロモーター、ルーの髪型がトランプ大統領風なのだが、これもモデルに寄せたのだろうか。

ラスベガスでの試合に同行していたセクシー美女(クリスティーン・エヴァンジェリスタ)が、そのシーンにしか出てこなかったのは残念だった。しかしながら、彼女のような美人が側にいれば試合前に全てを使い果たして戦いどころではなくなるので、ボクサーとしては別れて正解だろう。ビニーもラモッタのように股間を冷やしたのだろうか。冷やさなかったから負けたのだろうか。

ビニー/信じる男(字幕版)

ビニー/信じる男(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/12
  • メディア: Prime Video