オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

The Founder, 115min

監督:ジョン・リー・ハンコック 出演:マイケル・キートンジョン・キャロル・リンチ

★★★★

概要

ローカルチェーンのハンバーガー屋を全米展開する話。

短評

最高の成功譚であると同時に最悪の失敗譚でもある胸糞悪い話である。主人公はレイ・クロック。マクドナルドの創業者である。世界中の誰もが知るハンバーガー・チェーン“マクドナルド”(McDonald's)の“創業者”が“マクドナルド”ではなく”“クロック”とは、一体いかなる事情があるのか。つまりはそういう話なのである。

あらすじ

ミルクシェイク用のミキサーを売り歩くセールスマンのレイ・クロック(マイケル・キートン)。売れ行きが芳しくない中、一つの店舗から8台という大型の注文が入る。これは一体どういうことかと店を見に行くと、そこはマクドナルド兄弟の営むハンバーガー屋である。そこでは出来上がりを待たされず、注文間違いもない。レイは「こいつは凄い!」と兄弟にフランチャイズ化を申し込むのだった。

感想

この物語の肝は、実はマクドナルド兄弟の発案した完璧なシステムが凄かったわけではないという点だろう。兄弟はレイ以外にも気前よく自分たちの店舗を見学させているが、誰も後のマクドナルドのような成功を収めていない。マクドナルド成功の鍵は、(少なくとも三十郎氏には)知られざる二つの事実にあったのである。

一つは、単なる外食産業から不動産業への転換を図ったというもの。フランチャイジーの売上からロイヤルティを取るだけではなく、土地をリースすることで安定的な利益を得る。その利益がチェーン展開を加速させ、さらなる利益をもたらす。結果としてフランチャイザーは支配力を増す。この不動産業者の名称こそが「マクドナルド・コーポレーション」であり、我々の知るマクドナルドの母体なのである。

もう一つは、「マクドナルド」という名前そのものに魅力があったというもの。同じシステムで同じ商品を出しても同じ成功を収めるわけではないのである。これは盲点であった。三十郎氏の世代だと物心がついた頃には既にマクドナルドの名前が脳に刷り込まれていたので、名前の響きそのものに着目したことがなかった。マクドナルが浸透しているが故に特別な響きを持つのかと思っていたが、マクドナルドという名前は最初から特別だったのである。

以上の二点に気付き成功を収めたレイ・クロックのサクセス・ストーリーは、ディック(ニック・オファーマン)とマック(ジョン・キャロル・リンチ)のマクドナルド兄弟にとっての悪夢である。彼らの始めた家族的なビジネスがレイ・クロックに乗っ取られ、挙げ句は「マクドナルド」の名前までも奪われてしまう。レイの成功は「なるほど、すげえ」と楽しいが、人の良すぎる兄弟が食い物にされる姿を見るのは胸が痛い。安くて美味いが身体に悪い、マクドナルドのハンバーガーを食べるかのような両面性を持つ映画である。

“執念”と“覚悟”でマクドナルドという外食チェーンを全米に拡大したレイの功績は認められて然るべきだろう。彼のおかげで世界中どこでもハンバーガーが食べられると言っても過言ではない(個人的な体験を話すと、インドを訪れた時にその辺のカレー屋に入る勇気がなく、最初に食べたのがマクドナルドのハンバーガーだった。それはカレー味だった)。一方で、その裏には犠牲者がいて、ハンバーガーの質も兄弟が作っていたようなものではなくなっている。憎たらしい怪物が全てを変えてしまった。我々は“そういう商品”を食べているのである。

果たして、その怪物とはレイ個人なのか、それともビジネスという概念なのか。レイと兄弟の関係だけでなく、その辺りの多面性も本作の面白さだろう。

それにしても「新しいアメリカの教会になる」とは上手く言ったものだと思う。

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(字幕版)

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/24
  • メディア: Prime Video