オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ヨーロッパ横断特急』

Trans-Europ-Express, 94min

監督:アラン・ロブ=グリエ 出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、マリー=フランス・ビジェ

★★★

概要

麻薬の運び屋の話を考える話。

短評

アラン・ロブ=グリエの監督第二作。前作『不滅の女』では何をしているのかさっぱり分からず置き去りだったが、本作は少なくとも「メタフィクションの構造で遊んでいる」ということは分かる。本編と呼ぶべき劇中劇の内容はスリラーなのに、それをフィクションとして扱ってツッコミが入るので、ヘンテコで愉快なコメディ映画になっている。

あらすじ

鉄道のコンパートメントで合流したジャンとマルク。彼らは「この列車を舞台にして映画を撮ろう」と発案し、「麻薬の運び屋の話にしよう」「目的地はアントワープで」「タイトルは『ヨーロッパ横断特急』だ」とアイディアを膨らませていると、その映画の内容が本編として始まる。

感想

映画監督のジャンを演じるのがロブ=グリエ本人で、彼にツッコミを入れるスクリプターの女性を演じるのが彼の妻という、徹頭徹尾メタフィクショナルな映画である。本編中に登場するコミックの内容が本編そのままだったり、映画の主人公エリアスがジャンの世界に現れたりと、入れ子構造は留まるところを知らず、現実と虚構が交錯する。

ジャンが映画の冒頭、キヨスクで読んだエロ本をエリアスも読み、彼がコンパートメントへと向かう通路ですれ違った女とエリアスもすれ違う。前作にも見られた反復の要素である。また、前作との共通点として、常に主人公を監視しているかのような視線の存在が挙げられる。前作では非常に不気味に感じ、「これには何の意味があるのだろうか?」と困惑したが、本作にようにメタフィクションであることを前提とすると、この視線は観客や制作者が登場人物に向けているものなかもしれないと推測できる。

ロブ=グリエが文学界で行ったヌーヴォー・ロマンという活動が、「作者の世界観を読者に押しつけず、読者は与えられたものから自分で主題を構築する」ものとのことなので、映画でも意味深に見える描写に意味を与えるのは観客自身ということなのかもしれない。

「麻薬をやめてダイヤにしようか」「いや、やっぱり麻薬でいいや」とか「さっきの娼婦は何だったの?」「ただの端役だよ」といった風に適宜修正が加えられる描写は、「意味深に見えても適当に思い付いただけなんだよ」と嘲笑っているかのようで、シリアスなクライムスリラーをコメディとして魅せてしまう構図の妙があった。

そこまで言われても意味を求めてしまうのが悲しい性かな、「そんなこと言っても……」というやつである。緊縛趣味と暴力的なセックスの描写は何を意図しているのだろう。ただの趣味なのか。確かに悪戯な笑みを浮かべる美女との組み合わせは素敵である。また、前作に続いて印象的な使われ方をしていた窓のブラインドは何を意図したモチーフなのだろうか。やはり疑問は尽きない。

ヨーロッパ横断特急

ヨーロッパ横断特急

  • メディア: Prime Video