オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

I, Tonya, 119min

監督:クレイグ・ガレスピー 出演:マーゴット・ロビーアリソン・ジャネイ

★★★

概要

トーニャ・ハーディングの半生。

短評

三十郎氏にはフィギュアスケートを熱心に見ていた時期がある。と言っても、フィギュアスケートという競技そのものが好きだったわけではない。採点競技は苦手である。日本人選手の活躍に胸を躍らせたわけでもない。三十郎氏はフィンランドキーラ・コルピ選手の熱烈なファンであり、彼女は並み居る映画スターを押しのけて、“最も美しい顔の持ち主”として三十郎氏の中に現在も君臨中である。彼女の引退と同時にフィギュアスケートを見ることはなくなってしまったが、美しい氷上の世界とは対称的な見苦しい世界があるものだと笑える映画だった。

感想

トーニャ・ハーディングマーゴット・ロビー)の特殊な境遇や型破りな競技生活に焦点が当たっているが、これ、ほとんどショーン(ポール・ウォルター・ハウザー。イーストウッドの新作『リチャード・ジュエル』の主役)が悪いだろう。彼のような誇大妄想狂のクソニートが周囲にいる事自体が“特殊な境遇”に含まれているとも言えるし、『羅生門』方式で描かれる物語の真実がどこにあるのかも分からないが、本作を観る限りでは責任者はショーンに間違いない。なんなんだ、このデブ男は。事件当時、ショーンの存在にはどれくらい注目が集まったのだろうか。彼に関する描写が事実であれば、トーニャには同情が集まったのではないかと思う。もっとも彼だって掘り下げれば間違いなくなんらかの病気なわけで、気の毒な男という気がしなくもない。

富裕層のスポーツというイメージのあるフィギュアスケートだが、トーニャはアメリカの典型的な貧困家庭育ちである。母ラヴォナ(アリソン・ジャネイ)がアレ過ぎて父に逃げられ、母から厳しいしつけ(=虐待)を受けて育ち、同じく底辺のジェフ(セバスチャン・スタン)と結婚して、DV×喧嘩×セックスのバリューセット的な生活を送る。フィギュアスケートの才能がなければ、間違いなく日の目を見ることなく一生を終える人である。しかし、どうにも憎めない。私生活での笑えるくらいのダメっぷりがコントラストとなって、トーニャの氷上での姿を輝かせてくれる。リンクという居場所を失うのはさぞかし辛かったことだろう。

「理想的なアスリート像」に合わないという理由で代表を外されそうになる描写があるが、どの辺りまでが事実なのだろう。本作が彼女に同情的な視点から制作された映画だという点を加味しても、この辺りが一発勝負でないスポーツを好きになれない理由である。

そんな彼女の壮絶な人生がコミカルに描かれている。時に彼らは第四の壁を超えて観客に語り掛けてくる。まるで「私が本当のことを話しているんですよ」と言わんばかりである。あまりに主張するので逆に誰も信用できないというのが、また笑える。

三十郎氏はトーニャ・ハーディングのことを全く知らなかったが、エンドロールで実際のトーニャ・ハーディングの演技が流れるので、着地を決めた時の表情が完コピだと感心した。ところが、その直後に登場する母親とショーンの映像が生き写しレベルで驚愕した。こうなると気になるのは銀メダルを獲得した時のナンシー・ケリガンの表情である。Youtubeで探してみると、確かに「ウンコを踏んだ時のような顔」をしているのが確認できた(刷り込みの効果もあるとは思うが)。

ちなみに、トーニャのプロボクサーとしての戦績は3勝3敗だそうである。

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(字幕版)

アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル(字幕版)

  • 発売日: 2018/11/21
  • メディア: Prime Video