オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『ザ・サークル』

The Circle, 109min

監督:ジェームズ・ポンソルト 出演:エマ・ワトソントム・ハンクス

★★

概要

SNSディストピア

短評

2017年の映画としては流石にネタが古過ぎる。監督が「孫の投稿が見たくて最近SNSを始めたばかりのお爺ちゃん」なのかと思ったら、40才の男性である(原作者もそれほど老けてはいない)。彼はベン・キャッシュにでも育てられたのだろうか。「生活の全てを公開したらこんな怖いことになりますよ」とか「巨大IT企業が人々のプライバシーを侵害してますよ」なんて今更感溢れるネタを、どうすれば恥ずかしげもなく披露できるのか。現実は本作で描かれる近未来よりも恐ろしく、またSNSとの付き合い方も利用者は学習しているというのに。

あらすじ

水道会社のコールセンターで派遣社員として働くメイ(エマ・ワトソン)。彼女は友人アニー(カレン・ギラン)のコネを使って巨大IT企業ザ・サークルGoogleFacebookをくっ付けたような会社)に入社する。水道会社と同じカスタマーサービス業務を経て、彼女はザ・サークルの新サービスSeeChangeの実験台として生活の全て(バスルーム除く)を全世界に公開することになる。

感想

テーマが既に陳腐化しているという根本的な問題に加え、本作は構成上の問題も抱えているように思う。ザ・サークルがちっとも魅力的に見えない。この会社の良いところは高給と福利厚生の待遇だけで、入社した瞬間からカルト宗教の如き胡散臭さがプンプンしている。アニーは常時躁状態だし、メイにSNSの活用を進言する同僚はカルトの勧誘員にしか見えない。この社員総ファミリー的なイケイケ感はIT企業あるあるなのかもしれないが、「社内イベントは強制じゃないけど、なんで出ないの?皆出てるよ」なんてどこのブラック企業だよ。

また、小型のワイヤレス・カメラを世界中に張り巡らせるSeeChangeは、CEOイーモン(トム・ハンクス)の「これで人権弾圧や環境破壊と戦えるぞ!」という空疎な言葉に反して、北朝鮮以上の監視社会ツールにしか見えない。こんなものに騙されるウブなネットユーザーが果たしているのだろうか。

従って、この物語には“落差”がない。「こんなはずじゃなかった……」が存在せず、「そりゃそうだろ」だけで事が進んでいく。私生活の全てを公開するというネタもSNS社会が到来する以前に既に描かれているため、何の新鮮味もない。会社に順応していくメイも、何も考えていない阿呆にしか見えない。最後の仕返しだって、サイコパスの経営者ならむしろ率先して自分からやってみせるだろう。社会の認識がゼロ年代で止まっているような周回遅れの話である。現代の闇を抉り出すことも、近未来の恐怖を予言することも、そのどちらにも失敗している。

エマ・ワトソンが生活の全てを中継していたら三十郎氏も喜んで見るだろう。しかし、「バスルームは除く」という“逃げ”は一体全体どういうことか。三十郎氏はそこが一番見たいというのに。両親の閨房は披露したのに自分のは見せないなんてことが許されるのか。秘密は嘘ではなかったのか。公開してしまえば、自分の裸に関するコンプレックが薄れるかもしれないぞ。

ザ・サークル(字幕版)

ザ・サークル(字幕版)

  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: Prime Video
 
ザ・サークル

ザ・サークル