オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『移動都市/モータル・エンジン』

Mortal Engines, 128min

監督:クリスチャン・リヴァース 出演:ヘラ・ヒルマー、ヒューゴ・ウィーヴィング

★★

概要

都市が移動する話。

短評

十代の頃はリアルタイムで『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』に親しんできた三十郎氏だが、その後のファンタジー映画との相性はいまいちパッとしない。『ライラの冒険』や『ナルニア国物語』の失敗によりファンタジー映画ブームはいとも簡単に終焉し、楽しめたのは『ホビット』だけである。映画の出来が悪いからなのか、三十郎氏とファンタジーの相性が悪いからなのか、それとも既にファンタジーを楽しめない年齢になってしまったのか。本作については三番目の理由を強く感じた。十代の少年少女の深みのない冒険譚だけではワクワクできないのだ。

あらすじ

たったの60分で地球の文明が荒廃する戦争が起こり、残された人類は移動都市で暮らすようになった。移動都市は互いを捕食する戦いを繰り広げ、強大な捕食都市・ロンドンが地上に君臨するようになった。本作はロンドンに挑む少女の物語である。

感想

それはわずか60分の出来事だった。古代人は人類を滅亡の淵へと追いやった。生き残った者たちは移動都市を作り、荒廃した地球で新たな暮らしを始めた。互いに食料と燃料を奪い合い、弱者は狩られ、強者はその勢力を更に拡大していった。やがて新たな時代が始まった。偉大なる西方捕食都市の時代が。 

『移動都市/モータル・エンジン』より

以上が、この世界についての説明である。「都市が都市を食べる」という設定は面白いのだが、果たして「食べる」という行為が必要なのかが引っ掛かる。普通に略奪したのではダメなのか。図体のデカい移動都市全体で襲いかかるよりも、小回りの利く飛行機で襲撃する方が有効なはずである。事実、巨大なロンドンはたった四機の部隊で攻略される。また、都市を飲み込む描写が最大の見所のはずなのに、冒頭で一度描かれた後は主人公たちの小さな話に終始しているのもいただけない。壮大なスチームパンク的世界は何処に行った。飲み込んだ後の処理の詳細が描かれないのも解せない。

『ウォーターワールド』のような世界ならまだしも、広大な大地が余っているのに拠点を動かす必要があるのだろうか。空中都市や壁を築いて定住している者たちもいるだけに、民間人が攻撃を受ける危険を冒してまで都市全体で戦う意味が分からない。本作は設定の部分で引っ掛かりを感じてしまい、どうも世界に入り込めなかった。本作の内容よりも60分戦争の方がよほど気になる。オールドテクと呼ばれる過去の技術を隠蔽するような描写あるので現在の支配体制を揺るがすような秘密が出てくるのかと思ったが、特に関係なく超兵器メデューサが出てきただけだった。この世界を揺るがす超兵器は再攻撃の準備に時間を要するため、件のたった四機の部隊に攻略を許す。

どう考えても十代の少年少女の物語なのだが、主人公ヘンリー・ショウを演じているヘラ・ヒルマーはアラサーのアイスランド人である。相方のトム・ナッツワーシーを演じているロバート・シーハンもまたアラサーのアイルランド人である(原作ではこちらが主人公らしい)。これは設定に準拠したキャスティングなのだろうか。それにしては二人とも人格や行動が顔に比して幼い気がする。

ヘンリーは母の仇サディアス・ヴァレンタイン(ヒューゴ・ウィーヴィング)を追っている。一度目のチャンスは衆人の中での暗殺。見事に接近してナイフを突き刺すものの、「母の仇だ!」とゴチャゴチャ言っている内に邪魔が入って未遂に終わる。二度目のチャンスは一対一でヘンリーは銃を持っている。絶好の舞台である。ここでも彼女は「私はお前を殺す」とゴチャゴチャ言っている内に銃を奪われて未遂に終わる。喋り過ぎである。顧客にキメ台詞を指定された殺し屋じゃないんだから。

古代アメリカの神々として祀られているミニオンズや、賞味期限から1000年経っても食べられるトゥインキーの小ネタは好きだった。トゥインキーは仮に腐らなくても水分が抜けてカピカピにならないのだろうか。「アメリカ人は本当にトゥインキーが好きなんだなあ……」とコロンバスを思い出すが、原作者はイギリス人だし、監督はニュージーランド人である。

移動都市/モータル・エンジン (字幕版)

移動都市/モータル・エンジン (字幕版)

  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: Prime Video
 
移動都市 (創元SF文庫)

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