オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『カフェ・ソサエティ』

Café Society, 95min

監督:ウディ・アレン 出演:ジェシー・アイゼンバーグクリステン・スチュワート

★★★

概要

青年と叔父と、その愛人の三角関係。

短評

ウディ・アレンは完璧なウディ・アレン役の俳優を見つけたのではないだろうか。神経質で優柔不断、そして早口なユダヤ人。ジェシー・アイゼンバーグにぴったりである(『ローマでアモーレ』はどうだっただろう)。アレン的な役があるのにアレン本人が出演していないことが、これほどまでに自然だということ自体が凄い(本人はナレーションを務めている)。映画はいつも通りシニカルに笑えて、ちょっぴりビターである。スコセッシ映画の如く軽快に人が死ぬのも楽しい。

あらすじ

1930年代。ニューヨークのユダヤ人青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は、叔父のフィル(スティーヴ・カレル)を頼ってハリウッドに行く。叔父は映画スターの大物代理人なのである。ボビーは、フィルの秘書ヴォニー(クリステン・スチュワート)に街を案内してもらう内に彼女に恋するが、実はヴォニーはフィルの愛人なのである。ボビーは恋破れてニューヨークへ戻り、兄のベン(コリー・ストール)にナイトクラブの経営を任されて成功を収める。

感想

オシャレでテンポの良い、これぞウディ・アレン映画である。三十郎氏は「寝る前に一本映画を見るなら」という(されたことのない)問いに対して「どれでもいいからウディ・アレン」という回答を(勝手に)用意している。自由に参考にしていただきたい(ただし『インテリア』を選ぶのは別の機会にした方がいい)。素敵に楽しく、考えさせる知的さもありながら、それでいて気が重くなったり後を引くような面倒さがない。これが大人のコメディというものである。

ニューヨーク帰還後のボビーは成功者となり、ヴェロニカ(ブレイク・ライブリー)という美しい妻を得る。子供も生まれて万事順調……なはずなのに、目の前に再度ヴォニーが現れてしまう。確かにヴォニーは超美人だが、今の奥さんも超美人だし、ヴォニーに対しては気まずく複雑な感情を抱えているはずなのに、彼女に惹かれてしまうのは何故なのだろう。手に入れたものよりも手に入れられなかったものが気になるのが男という生き物なのか。人生は「あの時こうしていれば……」の連続である。

定番のユダヤ人ネタの中では、ボビーの兄ベンを形容する「Tough Jew」という言葉が好きだった。彼はギャングであり、説得と称してバンバン射殺し、遺体はコンクリートに埋める。このスピード感はスコセッシ映画のそれである。死刑を宣告された彼が、「来世がないのが嫌だから」とキリスト教に改宗するのも笑えた。それに対する姉ローズ(ジーニー・バーリン)のリアクションが「ユダヤ教にも来世があれば信者が増えるのに」というのも笑える。

ボビーと出会った時のヴォニーの服装が可愛らしくてクリステン・スチュワートらしくない。似合ってはいるのだが、なんだか違和感がある。近年のいかにもバイ・セクシャルなファッションだったりクールなイメージとは対象的に、頭にリボンをつけた清楚なお嬢さんである。これはこれで可愛かったが、ニューヨークでの再会時に“ハリウッド化”している姿の方が自然だった。彼女にはフィルとのハリウッド・ライフの方が合っていたということでいいのかな。しかし、アレンが魅力的に描くのはニューヨークの方である。明け方のセントラルパークのなんとロマンチックなことか。

societyの日本語表記は「ソサイエティ」だと思っていたのだが「ソサエティ」なのか。「ソサイエティ」に聞こえるんだけどなあ……。

カフェ・ソサエティ(字幕版)

カフェ・ソサエティ(字幕版)

  • 発売日: 2017/11/01
  • メディア: Prime Video