オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キャットファイト』

Catfight, 95min

監督:オヌール・トゥケル 出演:アン・ヘッシュ、サンドラ・オー

★★★

概要

女の戦い。

短評

“女の戦い”と聞いてイメージするのは何だろうか。見苦しいマウントの取り合いか、口汚い罵り合いか、それとも陰湿なイジメだろうか。本作で描かれる戦いは殴り合いである。ビンタのようなへっぽこ攻撃ではない。可愛らしいおともだちパンチでもない。本気のグーパンチである。工具を持ち出すガチのバイオレンスである。女二人がそれほど言い争うことなく拳で語り合う姿は新鮮だった。

あらすじ

金持ちの専業主婦ヴェロニカ(サンドラ・オー)と売れない画家のアシュリー(アン・ヘッシュ)。一人はホストの妻として、一人は給仕としてパーティーで出会う。彼女たちには学生時代の因縁があるらしく、宿命的なのか不毛なのか分からない戦いの幕が上がるのだった。

感想

最初だけはマウント合戦である。合戦と言うよりはヴェロニカが一方的にマウントを取る。住んでいる地区で金持ちアピールである(ソーホー+ハンプトンの別荘vsブッシュウィック)。そこで終わればよかったものの、「トロフィーワイフ」と呼ばれるとキレて一撃(サンドラ・オーはアジア人の感覚だと不細工なアジア系だと思うのだが、本国ではトロフィー扱いに違和感はないのだろうか)。壮絶に殴り合う。精神のマウント合戦が、MMA的なマウント合戦に変貌する。

戦いは3ラウンドまである。第1、2ラウンドで敗北するのは、その時点の社会的勝者であり、相手に対して嫌味な奴が負ける。これは痛快である。第1ラウンドの勝者はその後勝ち組になって偉そうになり、逆に敗者は全てを失って謙虚になる。負けてほしい方がきっちり負けるようになっている。アシュリーが、画家として成功した時にイビり倒していたアシスタントのサリー(アリエル・カヴォッシ。声がヘンテコで可愛い)に、「人生終わったあなたを見ているのは楽しい」と言われるのは痛烈。第3ラウンドはお互い全てを失っているので戦う必要はなく、「もうやめましょ」という話になるのだが、そうは問屋が卸さない。彼女たちは戦い続ける。最高に不毛である。

敗者の辿る道がリピートする展開が面白かった。負けた方は昏睡に陥り、目覚めると二年が経過している。唐突で笑える時間の飛び方である。彼女たちは失い方まで同じで、「争いは、同じレベル者同士でしか発生しない!!」というカンガルーのAAを思い出した。彼女たちは、理由は何でもいいから殴り合うより他に道はないのだ。軍需産業を儲けさせるために戦争をしているという描写があるので、彼女たちの滑稽な戦いを通じて不毛な戦争を皮肉る意図もあるのだろう。

女性同士の殴り合いというのは、それだけで新鮮であり、特に流血沙汰は珍しい。「そこまでやるか!」と笑えるファイトは素敵なのだが、パンチが当たっているように全く見えないショットが多いのは残念だった。

同性愛者のアシュリーが精液のスポイト注入により妊娠を果たしている。『ドント・ブリーズ』で見た時には「なんと猟奇的な強姦!」と驚いたものだが、医師の手を介さずスポイトを使うのは意外とポピュラーだったりするのだろうか。

キャットファイト(字幕版)

キャットファイト(字幕版)

  • 発売日: 2018/02/21
  • メディア: Prime Video