オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『消えた少年』

Secuestro(Boy Missing), 105min

監督:マル・タルガローナ 出演:ブランカポルティージョ 脚本:オリオル・パウロ

★★★

概要

少年と母親に振り回される話。

短評

脚本がオリオル・パウロなのでミステリーかと思いきや、あらぬ方向に話が転がっていくスペイン製スリラーである。『消えた少年』と『ボーイ・ミッシング』の二つの邦題がある。原題の『Secuestro』は、拉致や誘拐という意味。

あらすじ

人気のない田舎道をトボトボと一人で歩く少年が発見される。少年の名前はビクトル。彼の母パトリシアは弁護士である。ビクトルの「誘拐された」という証言を基に捜査が進められるが、容疑者チャーリーにはアリバイがあることが判明し、パトリシアの行動が裏目に出ることになる。

感想

これがどんでん返し系のミステリーなら、チャーリーは誘拐をしていたが証拠不十分により釈放されるのが第一のオチで、実はパトリシアもビクトルを誘拐して息子にしていたという二段オチが来そうだが、全然そんな話ではなかった。パトリシアが裁判で用いる証拠不十分や、ビクトルの「家に帰りたい」という発言が伏線になるのではないかと思ったが、そんな正直な展開は見せなかった。三十郎氏の予想が的外れなだけではあるのだが、良い意味で裏切られた。「そっちか」という感じである。

あらぬ方向に転がっていきはするが、これはパトリシアが阿呆なだけで、驚愕の展開というわけではない。なるようにしてなっただけである。ビクトル失踪の原因はありがちなものだし、パトリシアの行動も「そんなことをしたら報いを受けても仕方がない」というものである。そこからもう一捻りあるのがパウロ脚本作品らしさだが、それも報いの内に含まれていると言ってよいだろう。

その辺りの観客の心情は上手くコントロールされている。子供を誘拐された母親と言えば同情されて然るべき存在なのだが、彼女はやり手の、つまり悪辣な弁護士であり、目的のためには手段を問わないタイプである(その点が証拠不十分という要素で循環する)。観客に彼女を嫌わせるように誘導することで、ラストシーンは爽快感を伴うものになっている。

ユーロには500ユーロ紙幣があるため、600万ユーロが意外に小さなケースに納まっていた。猪瀬元都知事もユーロ建てで借りていれば、あんな茶番を演じずに済んだのに。

ラストシーンは火曜サスペンス劇場もかくやの断崖絶壁だが、まだ事件の全容が解明されていないのに警察は彼女を野放しにしてよいのだろうか(あれで事件自体が存在しなかったということなのか)。チャーリーの弁護士に「基本的人権の侵害で訴えてやる」と言われているシーンもあるように、本作のスペイン警察は横暴でありかつ無能である。

闘犬のシーンがある。人間が殺される方法は残虐であるほど楽しめるのに、犬がやられるのはダメである。

ボーイ・ミッシング

ボーイ・ミッシング

  • 発売日: 2017/11/02
  • メディア: Prime Video