オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『グッド・タイム』

Good Time, 101min

監督:サフディ兄弟(ジョシュ、ベニー) 出演:ロバート・パティンソン

★★★

概要

逮捕された弟を外に出すため兄が暴走する話。

短評

一体どの辺りが“グッド・タイム”なのかと言いたくなる、皮肉なタイトルの犯罪映画である(ラストシーンは希望と捉えてもよいのか)。監督のジョシュとベニーのサフディ兄弟は、新作『Uncut Gems(原題)』がオスカー・レースのダーク・ホースと目されている注目の監督である。破滅的なまでのリアリティが印象的だった。

あらすじ

コニー(ロバート・パティンソン)とニック(ベニー・サフディ。監督である)の兄弟の物語である。二人は銀行強盗を企てるが、奪った金から塗料が噴出し、それが切っ掛けで弟のニックは逮捕されてしまう。ニックには軽度の知的障害があり、拘置所にはいられないと判断したコニーは保釈金の調達を画策する。ところがニックは拘置所内での喧嘩により入院していることが判明し、コニーはニックを脱走させようする。

感想

ダメな人がダメなことをしてダメになっていく。ダルデンヌ兄弟的な趣があった。コニーが何とかしようと足掻けば足掻くほど事態は悪くなっていく。全てが行きあたりばったりである。映画を観ている間は彼に感情移入できるが、少し冷静になって考えてみれば単なる阿呆である。しかし、阿呆には阿呆なりの理屈と事情がある。その瞬間の焦燥感がよく出ているパティンソンの演技は見事。

コニーはニックのために必死になっているのだが、実は結果だけでなく行動そのものがニックのためになっていないという結末が切ない。それどころか逆である。そもそも逮捕の原因を考えれば、コニーがニックを強盗に参加させたのが悪いのである。ニックはいるだけで何もしていないし、いる必要は全くなかった。彼は弟のことを大切に想っているのかもしれないが、弟を理解はしていないし、弟に何が必要なのかも自分の尺度でしか考えられない。押し付けである。最終的にはコニーが逮捕されたことでニックと離れ、ニックは真っ当な助けを得るチャンスを手に入れた。

しかし、「バカでどうしようも兄貴だな」で片付けないのが底辺映画の魅力である。コニーがダメな解決策しか思い付かないのは、そういう人生を送ってきたからである。きっと真っ当な教育も受けられず、周囲にモデルケースとなるような人物もいないのだろう。同じような人間に囲まれて育ち、「この生活しかない」と頭に刻まれているに違いない。どうやって抜け出せばよいのか分からないのである。それは間違いなく社会の責任である。

病院からニックを連れ出したと思ったら、人違いだったという展開には笑った。更に、人違いされた男がジャンキーで、彼が入院に至った経緯も笑える。そして、彼らの向かう先が遊園地での宝探しというのも最高に皮肉が効いている。一発逆転できる都合の良いお宝なんてありはしない。

若いイケメンに依存する熟女を演じるジェニファー・ジェイソン・リーもハマっている。彼女は声に特徴があり、失礼ながらダメ女が似合うのである。

グッド・タイム

グッド・タイム

  • 発売日: 2017/12/15
  • メディア: Prime Video