オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『サバハ』

사바하(Svaha: The Sixth Finger), 123min

監督:チャン・ジェヒョン 出演:イ・ジョンジェパク・ジョンミン

★★★

概要

韓国の仏教系カルト団体の話。

短評

仏教系カルトと言ってもキリスト教の世界観とゴチャ混ぜになった、いかにもカルトな宗教団体の話である。映画の方も、オカルト的でありミステリー的でありサスペンス的でありホラー的であり、そしてコメディ的でもあるという素晴らしいゴチャ混ぜ感になっている。同じく韓国の宗教ものである『哭声/コクソン』よりもエンタメ色が強く、楽しんで観られた。

あらすじ

“極東宗教問題研究所”を運営し、カルト団体を取材・告発しているパク牧師。牧師というだけあってキリスト教の人である。そんな彼が調べている団体が“鹿野苑”。仏教系の団体である。パク牧師が鹿野苑を追うのがメイン・ストーリーなのだが、どうやら鹿野苑にも追っている人物がいるらしい。映画の冒頭で誕生する悪魔少女である。鹿野苑は仏教系団体なのにやっていることはキリスト教的で、悪魔少女の家はキリスト教徒なのに正体は仏教的という、とてもややこしいことになっている。

感想

悪魔少女の誕生シーンは純オカルトを予感させるが、次に出てくる牧師は世俗的でコミカルである(事務のおばちゃんの「空気清浄機、アーメン」が好き)。この牧師の調査がカルト団体から“事件”へと繋がっていき、それまでコミカルさとの対比でゾッとする恐怖を味わうことになる。

ゴチャ混ぜではあるが、決してとっ散らかってはいない。一つ一つの宗教的描写はどこに転がっていくのか分からないのに、丁寧に結末へと収束していく。牧師の調査で明らかになっていく事実は、ミステリー的に「おおっ!」と喜ばせてくれるものでありながら、オカルト的にギョッとなる。このバランスが見事である。話が複雑になっていくと、各宗教について不案内な者はついていけなくなりそうなところだが、ヘロデ王のエピソードなど重要な点はしっかり説明してくれるのもありがたい。

正体不明のまま残飯を与えられている悪魔少女が不憫なので、三十郎氏は「この子は虐待を受けているだけなのではないか?」と疑っていたのだが、そんなことはなくちゃんとオカルトだった。この子のオカルト的正体が明かされて尻すぼむのではなく、もう一人のオカルト野郎の人間的な業が浮かび上がってくる構図が見事である。

ホラー的なシーンでは弦楽器の不協和音が流れる。とっても『インシディアス』っぽいと思ったのだが、この音響演出には元ネタがあるのだろうか。ホラー映画の定番になってもよさそうな不気味さだが、少々わざとらしくて陳腐に感じるところもある。使いどころの難しい演出である。

悪魔少女が引っ越してきた村ではヤギ(?)を生贄に捧げる儀式をしており、本作は土着的なものまで含めて謎の宗教に満ちている。カルトの危険性は、キリスト教や仏教などの原型から変遷する過程に、教祖の(金銭目的だったり桃色目的だったりの)人為的な操作が介在する点にあると思うが、原型たる宗教の教義もまた複数の人間を介して信者に伝わっているわけで、三十郎氏に言わせれば大差ない。結局、その時代の多数派にとって都合の悪い事件を起こすかどうかである。