オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『バグジー』

Bugsy, 136min

監督:バリー・レヴィンソン 出演:ウォーレン・ベイティアネット・ベニング

他:アカデミー賞美術賞(デニス・ガスナー、ナンシー・ハイ)

★★★

概要

ギャングがラスベガスにカジノを作る話。

短評

バリー・レヴィンソンによるギャングの実録ものである。ギャング映画と言っても、主人公ベンジャミン・シーゲルは愛と夢に生きたロマンチストである。たまに自分がギャングであることを思い出したかのように殴ったり殺したりもするが、それがなければギャング映画であることを忘れてしまいそうになる。彼は、何もなかった砂漠のど真ん中のラスベガスに豪華なカジノを建て、我々の知っている今日のラスベガスの礎を築いた男なのである。『ゴッドファーザー』のモー・グリーンのモデルは彼なのだとか。

あらすじ

組織の勢力拡大のために西海岸に送り込まれたギャングのベンジャミン・“バグジー”・シーゲル(ウォーレン・ベイティ)。彼はラスベガスの小さな賭場を手に入れると、そこにモンテカルロを超えるような巨大カジノを建設することを思いつく。

感想

ロマンチストであり事業家でもあるバグジーだが、実務家としてはとんでもない無能である。一度ゴーサインを出したものが出来上がってから「こうじゃない!」と口を出して現場を困らせ(関わりたくないタイプの上司)、当初の予算100万ドルを大幅に超過して総額600万ドルに(投資したくないタイプの起業家)。更に、その内の200万ドルを恋人のヴァージニア(アネット・ベニング)に横領されている(信用できない責任者)。三分の一である。気付かない方が難しい額である。彼はこれに気付かず無茶な資金調達をする羽目になり(ホテルの株の400%を売却する)、結局命を落とす。どうしようもない阿呆である。金を集めるのに苦戦しているのに、出ていく金には一切頓着しないとは……。仕事だってたまに現場に顔を出しては文句を言うだけで大半はヴァージニアに丸投げなのに、一体何をしていたのか。

本作はカジノ建設の歴史映画であると同時に、バグジーとヴァージニアの恋愛映画でもある。ハリウッドの撮影現場でヴァージニアに出会ったバグジーは、妻子がいるにも関わらず猛烈なアプローチを開始。これだけならよくある話だが、上述の横領が発覚してもなお彼女を許してしまう辺りに、バグジーのスケールの大きな愛と阿呆さを感じられる。しかしながら、愛人の「奥さんと離婚してよ」圧力に揉めるのは既婚者の常であり、これを自分から言い出せず、妻に「離婚したいんでしょ、いいわよ」と言わせてしまう辺りに彼の器の小ささを感じ、どうにも格好いいとは思えない。

バグジーは阿呆エピソードに事欠かない。ムッソリーニの親友だという伯爵と知り合うと、彼はイタリアにムッソリーニを暗殺しにいこうと画策する。冗談ではなく本気である。計画が壮大過ぎて統合失調症ではないかと心配になるレベルである。

しかしながら、この阿呆の誇大妄想が今日のラスベガスの礎となったのである。どうしようない阿呆の破天荒な夢が、アメリカの夢として結実したのである。そこには確かにロマンがある。バグジーがカジノ建設を思いついた理由もよく分からないし、ギャングとしての手腕もブチギレて暴力に走るシーンくらいでしか描かれない。彼が能力を発揮するのは女性を口説くときだけである。それらの不満全てを、良くも悪くもロマンで片付けてしまったような映画だった。

バグジーとヴァージニアが痴話喧嘩しているところに仕事のトラブルが持ち込まれ、それに激昂したバグジーを見てヴァージニアがときめくという流れがある。彼女には、ただ感情に流されているだけのバグジーが仕事のできる素敵な男に見えたのだろうか。これがDV男にハマる幸薄女の心理なのか。もっともこのカップルは、性悪女にハマる阿呆男の構図だったが。

バグジー (字幕版)

バグジー (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video