オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー』

The Stranger, 94min

監督:オーソン・ウェルズ 出演:オーソン・ウェルズエドワード・G・ロビンソン

★★★

概要

アメリカに潜伏するナチスの残党が追われる話。

短評

1946年、終戦翌年の映画である。何の変哲もない田舎町にナチスの残党が潜伏して次なる戦争の計画を練っているという話は、当時のアメリカにとっては非常にフレッシュな素材であり、身近な恐怖だったに違いない。本作は追われる側の視点を中心に描いているが、普通の人の振りをした敵が社会に溶け込んでいるという設定は、多くの後続作品に見られるモチーフである(初出は他にある?)。『謎のストレンジャー』という別邦題がある。

感想

第二次大戦の戦犯を調査するウィルソンが、大量虐殺の主犯格であるフランツ・キンドラー(オーソン・ウェルズ)を追うシンプルな筋書きのサスペンスである。ナチスの残党を追うヒーローではなく、追われるヴィランオーソン・ウェルズが演じている。監督兼主演をやりたがる人の大半は善人の主人公を演じるイメージがあるが、ウェルズは自分を活かせる役というものをよく理解していたらしい。キンドラーに繋がる餌として泳がされたもう一人の残党マイネケの小柄な体格と大柄なウェルズ(190cm)の対比もあり、とっても怖い悪人に仕上がっている。

ヌラリと伸びる影の使い方が印象的な映画である。また、影が掛かって人の顔が見えない逆光の演出も良い。冒頭のマイネケ追跡のシークエンスでは、マイネケが通り過ぎた後にカメラが上へパンして、そこに監視者がいるシーンが良かった。現代の映画でもよく見られる演出である。姿は見えないが着実に追い詰める謎の組織感があって不気味である。表現の幅や可能性の面ではカラーがモノクロを大きく上回るが、“影”と“紫煙”については、コントラストの強いモノクロの方が圧倒的に印象的な仕上がりになると思う。『コーヒー&シガレッツ』がカラー映画だったら嫌だろう。

画作りには執拗なまでの拘りが感じられる。冷静に考えれば不自然な体勢まで、ショットとしてバッチリキマっている。

ウェルズが自身の演じるキャラクターに「自由や平等なんて騒いでいるのは外国人だけ。自発的な改革が無い限り変わらない」と言わせている。これをナチスの残党に言わせることで「俺たちは何度でも同じことをやってやるぞ」という裏の意味の発生させ、食事の場面に緊張感を生んでいる。また、そこに見られる発想自体がナチス的という展開も上手い。一方で、表面的な意味はドイツへの批判であり、第一次大戦の反省なく第二次大戦を引き起こしたドイツへの強い不信が窺える。更に、現代日本に生きる三十郎氏にとっては「正にその通り」と納得させられる台詞でもある。

ストレンジャー(トールケース仕様) [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アイ・ヴィー・シー
  • 発売日: 2003/04/25
  • メディア: DVD