オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『イカとクジラ』

The Squid and the Whale, 81min

監督:ノア・バームバック 出演:ジェフ・ダニエルズジェシー・アイゼンバーグ

★★★

概要

両親が離婚した家庭の話。

短評

ダメな人たちをダメなままに描いたコメディ映画である。文学博士号持ちのインテリ両親たちがどうしようもなければ、その子供たちもしっかりと問題児に育っている。ノア・バームバック監督の自伝的な内容であるらしい。タイトルの『イカとクジラ』はアメリカ自然史博物館の展示から。

あらすじ

文学的高尚さを志向しながら出版に至らない、売れない作家の父バーナード(ジェフ・ダニエルズ)と、作家として商業的成功を収める母ジョーン(ローラ・リニー)。二人が離婚して、高校生の長男ウォルト(ジェシー・アイゼンバーグ)と小学生(高学年?)の次男フランクは、両親の家を行き来する生活を送ることになる。

感想

こいつら、本当にどうしようもないな。バーナードは教養を振りかざして偉そうにしているが、実態は出版を断られ続けている“あの人は今?”な人である。プライドが高く負けず嫌いなのに(テニスでは執拗にボディを狙い、次男との卓球でも全力でスマッシュ)、次男が風邪薬を買う金を出すのも渋り、長男の恋人の分の食事代も出せない負け組である。特に面白かったのが、長男の映画デートに同行して、なんとデヴィッド・リンチの『ブルーベルベット』を観たがる。本当に自分のことしか考えていない人なのである。その割に自分の現状を認められない凡人でもある。

かと言って母ジョーンも褒められたものではない。離婚の直接的な原因は彼女の不倫である。一件バレると、次男に自分の不倫遍歴を語る、語る。出てくる、出てくる。相手は小学生だぞ。オープン過ぎるだろう。この妻は夫の行状を責めるが、彼女も相手のことなんて何も考えていないのである。「話せば分かってもらえる」と考えるのは、一種の甘えか驕りだろう。典型的な「自分は何も悪くない」と考えているタイプである。

そんな両親の板挟みにあうと、当然子供には問題が出る。特に幼い次男は顕著である。彼はアルコールを嗜み、学校で自慰行為をしては図書室の本やロッカーに精液をなすり付ける。随分と早熟な性癖である(図書室では棚を使って立ったまま床オナをしている。やめておけ。帰れなくなるぞ)。大人になっても犯罪である。長男の方も性については早漏的かつインポ的問題を抱えており、この辺りは母親の奔放さに原因を求められるのではないだろうか。父が家に連れ込んだ女子大生リリー(アンナ・パキン)が捨てたペーパータオルを回収するシーンは笑った。気持ちは分からなくはないが、手を拭いただけだぞ。母親の下着を漁る次男よりはマシだとは思うが。

そんな彼らのダメっぷりが、コミカルかつ淡々と描かれている。何かが起きそうで起きない。へんてこなリアリティを感じる映画である。

かつては怖くてまともに見られなかったという“イカとクジラ”の展示を、ウォルトが真正面から見据えるラストシーン。これは彼が怖いものから逃げなくなったという成長を示していると解してよいのだろか。親が阿呆でも子は勝手に育つのかな。次男は心配だけど。

イカとクジラ (字幕版)

イカとクジラ (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video