オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『タルーラ 〜彼女たちの事情〜』

Tallulah, 111min

監督:シアン・ヘダー 出演:エレン・ペイジ、タミー・ブランチャード

★★★

概要

ネグレクト母から赤ん坊を盗む話。

短評

エレン・ペイジ主演のNetflixオリジナル映画。いきなり余談だが、三十郎氏が直近で彼女の姿を見たのは『トレーラーパークボーイズ』である。出てきて驚いた。本作は、監督シアン・ヘダーの実体験が基になっているそうである。酷い話だとは思うが、一方で母親の気持ちも分かるような分からないようなで、やはり反出生主義こそが正解である。

あらすじ

車上生活を送るタルーラ(エレン・ペイジ)。恋人のニコがさよならも言わずに逃げてしまったので、彼を追ってニューヨークへ。ホテルの廊下でルームサービスの残飯漁りをしていると、下着姿の変態エロ熟女キャロライン(タミー・ブランチャード)が部屋から現れ、「従業員ね?赤ちゃん預かってくれない?」と赤ん坊のマディソンをタルーラに押し付けて出かけてしまう。仕方なく赤ん坊の面倒を見るタルーラだったが、帰ってきたキャロラインがマディソンに構うことなく酔いつぶれて寝る姿を見て、思わず連れ去ってしまう。

感想

人間模様が複雑で面白い。マディソンを連れ去ったタルーラが頼ったのは、ニコの母マーゴ(アリソン・ジャネイ)である。「あなたの孫よ」とマーゴを騙し、そのままニコの実家に居着く。マーゴの夫スティーヴンは、“若い男”を作って家を出ている。タルーラ─マディソンとマーゴ─タルーラの二つの疑似親子関係が成立し、親子や家族とは何かについて考えさせられる構図になっている。

この手の話の場合、大抵は主人公と赤ん坊の関係に焦点が当たって「マディソンはタルーラといた方がいいのに」と誘導される。本作もそういう構成ではあるのだが、キャロラインの追い詰められ方にも同情できる気がして一筋縄ではいかない。キャロラインの子育ては虐待そのものだが、かと言ってタルーラが正しいというわけでもない。夫と息子に逃げられたマーゴにも欠陥があり、三者三様の問題を抱えている。

人は誰しも完璧ではない。彼女たちは“事件”を通じて、学び、少し成長するのだろう(してほしい。特にキャロラインに)。また、彼女たちは助けを必要としている。なんでも一人でやろうとすると無理が生じる。困った時には頼っていいのだ。

とても褒められた母親とは言えないキャロラインだが、彼女には同情の余地があるように思う。核家族化が極まり、欧米のようにベビーシッターのバイトの文化もない日本では、自分の子供が生まれて、初めて赤ん坊と接するという人も多いのではないか。親元を離れて頼れる人がいなければ、どうしていいのか分からず混乱することも多いだろうし、他人の体験談のように上手くいかなければ不安にもなるだろう。「どうすればいいのか分からない」が積み重なって追い詰められる心情は理解できなくもないのである。そこに夫の無関心まで加われば尚更だろう。困った時には頼れる相手が必要なのだ。

公園で草を食べようとするマディソンに対し、タルーラが自ら草を口にすることで不味いと教える。草を食べて教えるという発想自体が凄いのに、なんと躊躇いのない食べ方だろうか。野生動物のそれである。

(もうすぐ二歳の)一歳児に演技を理解させるのは難しいだろう。撮影はアドリブに頼った部分も大きいのだろうか。マディソンはかなりタルーラに懐いているように見える。撮影前に慣らし期間があったのだろうか。タルーラに抱かれていると大人しかったマディソンが、ベッドに置いたり、ニコに渡すと泣き出すシーンはリアルに感じた。マディソンは腹を出して寝ている。風邪を引くだろう。布団掛けてやれよ。