オーガナザイズド

三十郎氏は映画とカメラと旅について語りたい。なお、実態はほぼ映画である。

『キング』

The King, 140min

監督:デヴィッド・ミショッド 出演:ティモシー・シャラメジョエル・エドガートン

★★★

概要

ヘンリー5世とアジャンクールの戦い

短評

ティモシー・シャラメのアイドル映画臭が尋常ではないNetflixオリジナル映画である。マッチョ至上主義が幅を利かせる現代のハリウッドにも、彼のような優男タイプの美男子には一定の需要があるらしい。ロックスターのようなパーマ頭にマッチ棒の如く細くて貧弱な肉体は「重い鎧を着れば一歩も動けず倒れてしまうのでは?」と要らぬ心配をさせられ、事実、戦闘シーンは迫力に欠ける。「俺は人とは違うんだぜ」アピールをしておきながら、周囲に流されてばかりのこの男がどうして王なのかと疑問に感じながら観ていたが、最後に意味が繋がった。古臭い血統主義的な話を装いながら王をバカにする話だと三十郎氏は解したのだが、合っているのだろうか。多分間違っている。

あらすじ

父ヘンリー4世が病死し、弟トマスも戦死したため、周囲に「お前しかいないぞ」と促されて即位したヘンリー5世(ティモシー・シャラメ)。酒と女に溺れる放蕩生活を送り「俺は王になんてならないぞ」と反抗期ぶっていた割にはあっさりとした心変わりである。大司教に「フランスと戦え」と促され、暗殺者を送り込まれたこともあり、彼は出兵を決意する。

感想

140分も掛けた割には断片を切り取った感のあるストーリーである。きっとシェイクスピアの原作戯曲はもっと長大な歴史絵巻なのだろう。世界史の授業で百年戦争の推移を詳しく習った記憶はなくて不親切な展開に感じるが、欧米の観客ならば多くが知っている教養なのかもしれない。この辺りの歴史の流れは、Netflix自らが解説動画を配信している。なお、三十郎氏はスカしたイケメンへの僻みによってヘンリー5世を愚王と断じたが、この動画の中では偉大な王として扱われている。

弟トマスに「戦いなんてやめとけ」と言いながら「俺が決闘でケリをつける」と出しゃばるヘンリー。フランスとの戦いでも皇太子(ロバート・パティンソン。ズッコケるシーンはこっちがズッコケそうになった)に対して「俺たちが決闘して、犠牲者を出すのはやめよう」と申し出るヘンリー。決闘ジャンキーである。弟に「お前は戦いを知らない」と言い放つ割には、本人も戦いを知っているようには見えない(実際にはそれまでに戦勲があり、戦う王として名を馳せたらしい)。

「こいつは本当に戯曲や映画になるような偉大な王なのか?どこか可怪しいぞ?」という疑問が結実するのは、フランスがあっさりと降伏し、シャルルの娘キャサリンリリー=ローズ・デップ)がヘンリーに嫁入りする終盤である。彼女は言い放つ「父は暗殺者なんて送ってないし、皇太子は阿呆過ぎて陰謀なんて無理よ。なんで戦争なんてしたの、おバカさん?」。そう、偉そうにしていたヘンリー5世は、フランスへと領土拡大を目論む家来に騙されていただけのおバカさんなのである。戦いに勝利したので有能扱いされているが、実態は軽い神輿である。

タイトルにズバリ『キング』を冠した重厚な物語と見せかけて、実は踊らされていただけというオチは三十郎氏好みであった。これがなければ、貧弱な美男子によるショボい戦闘しか見られない歴史映画として不満だけが残っていたはずである。ヘンリーがやたらと戦闘による犠牲者を減らしたがる現代的な価値観が、古臭い血統主義のモチーフを中和する目的があるような点も気に食わなかったが、終わりよければ全てよし。これは戦争も同じである。

The King (Original Score from the Netflix Film)

The King (Original Score from the Netflix Film)